鈴(すず)

 神社には拝殿の軒から綱を垂れ大きな鈴を鳴らし、それからお詣りします。何故鈴を鳴らすのか御存じでしょうか。
 それは神様に御詣りする前に気持ちを引き締める為でもなく、または心を込めてお詣りしますから神様どうか私の願事をよく聞いて下さい、と神様の注意をこちらに向けようとして鳴らすわけでもありません。鈴を鳴らす理由はコトタマに関係しているのです。
 古代の日本人は神様といえば何であるか、を知っていました。それが分からなくなったのは二・三千年前からのことです。人間がそれによって生活し、どう人間が行動すれば結果はどうなるか、をすべて知っている大いなるもの、それを人間は神と呼びます。とするなら

その神とはコトタマに他ならないことにお気付きになるでしょう。人間の心はコトタマによって構成され、人はコトタマの法則通りに生活し、その法則の枠から出る事ができません。人間の生命全てはコトタマなのです。コトタマこそ神なのです。
 神社参拝の折に人々が綱を振って鳴らす鈴はその古代の名残りなのです。鈴の形をよくご覧下さい。鈴の形は何かに似ていませんか。そうです。人間が口を空けたところの形を表徴しているのです。口を開けば言葉が出ます。その言葉を構成している一音一音は単に音だけのものではありません。音と同時に、例えば「タ」というコトタマです。
 参拝者にとって正面の本殿の奥に居ます神様とは、実は貴方が今手で綱を振って鳴らしている鈴の音、それに表徴されているコトタマなのだよ、ということを教えてくれているのです。
 三重県に伊勢神宮があります。御祭神は、内宮が天照大神、外宮は豊受姫大神です。このお宮は昔、拆釧五十鈴宮(さくくしろいすずのみや)と呼ばれました。釧とは古代の腕に巻く飾りのことです。その周りに小さい数個の鈴がつけてあるものがあるので五十鈴にかかる枕言葉となったと辞書にあります。先に書きましたように五十鈴即ち五十個の鈴とはアイウエオ五十音のコトタマのことです。伊勢神宮の御祭神天照大神とは、実は五十音のコトタマを以って表した人間の行動の鏡となる精神の構造に与えられた神名のことなのです。
 神社の拝殿前の鈴とコトタマとの関係をご理解頂けたと思います。神社で行ういろいろな儀式習慣は多くの現代人には想像も出来ない特別な風習が沢山あります。先年行われた天皇即位の大嘗祭の儀式の様式についても、その様式の理由や起源について「分からなくなった」という記録が己に室町時代の宮中祭官の記録に見える程です。けれどそれらの神道の儀式の様式や風習の起源とその理由について、コトタマの原理はすべて明白に解明してくれます。

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