言霊を自覚確認する方法について

 いままで言霊について母音・半母音・父韻・親音・子音と説明をしてきました。言霊とはいかなるものかについて大方の御理解を頂けたものと思います。さてそこでこれから言霊を自覚し確認するにはどのような方法があるかについてお話を進めてみたいと思います。人間が日常食べたり、議論したり、映画を鑑賞したり、道徳について考えたりする生活自体が、実は五十音言霊の働きそのものであります。自覚すると否とにかかわらず、人間は生きていかれることに変わりはありません。それなら言霊を自覚するとはどういうことなのでしょうか。人はスイッチ一つでテレビの番組を楽しむことができます。けれど大部分の人がテレビの受像機はどんな構造でできているのか、放送局から受像機までどんな仕組で連なっているか知りません。知らなくてもテレビはスイッチを入れれば映ります。しかしテレビがどこか故障を起したらどうでしょう。また、何かの都合でチャンネルが混線することが起こったらどうでしょう。否応なくテレビの専門家のお世話にならざるを得ません。さもなければテレビの勉強を自身で始めなければなりません。その上で構造を知った時、その人はテレビに関してはすべてを知り、自由に操作できます。言霊についても同様です。人間の日常の生活から始まって、社会の情勢・国家間の問題・人類全体の将来等に何らかの危惧・疑問を持ち、既存の学問・宗教・道徳等を駆使して事態に対する意識を統一しようとしても、どうしても不可能となった時、人間生活の最も根本の要素である言霊の存在が初めて身近なものに感じられてくるのです。事態を解決するためには人間生命の構成要素である言霊の原理の立場から人生を再認識しなければならなくなるわけです。
 言霊は生命の精神における究極単子です。人間をいま・ここで現に生かしている根本要素です。ですから言霊を確認する第一の道は、あくまで自分の働いている心に即して考えていくより他にはありません。言霊として説かれた要素を自己の心の働きの中に反省によって確認していくことです。そしてその確認ができたら、その確認された言霊の原理によって自己と他・社会・世界の動きを再構築・再認識していくことです。れが言霊確認の第二の道となります。この二つの道が完成されますと、その人は人生最奥の言霊の立場において人生を見、社会を観察し、世界を見透すこととなります。これ以上に人間世界を明らかに知る方法はありません。
 前置きはこれくらいにして言霊自覚の方法についての話を進めることにしましょう。
 この本の初頭に人間精神の五つの宇宙の説明しました。欲望・知識・感情・道徳・意志の五つの世界です。人間はそれを自覚すると否とにかかわらず、この世に生まれてきた以上必ずこの五つの宇宙の中で生きてゆきます。しかし人間は動物であると同時に神の子として自分の住んでいる宇宙実在を認識・自覚し、それに名を付け、他の人々に伝え文明を興し後世にまで遺し、人類として発展します。そして五つの宇宙をウオアエイと順を追って自覚認識してゆくことがとりも直さずその人の心の進化成長でもあるのです。そして五つのうちの最後の認識である人間意志の実在言霊イを見極める時、言霊の原理を理解し確認して活用運用することができるようになります。
 昆虫は幼虫-蛹-成虫の三段階を経て大空に飛び立ちます。人間の精神は五段階の進化が可能です。ただし昆虫と違って誰でもがこの進化段階を全うするわけではありません。年数だけは長く生きても、第一段、または第二段の認識自覚で終わる人も多いのです。欲望・知識・感情・道徳・意志等の五つの世界をそれぞれ一つずつ他との混同なしに自覚するにはどうしたらよいでしょうか。
 いま、この人間の精神進化の段階を順を追って説明してゆくことにしましょう。

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