言霊原理による創造について②

言霊原理に基いて人類数千年の歴史の概略を書いてみましょう。
 一、数千年ないし一万年近い昔、たぶんヒマラヤ付近の標高の高い地方において、賢者のグループの永年の研究の結果人間精神の究極構造が解明され、その要素が言霊五十音と規定された。そしてこの原理を基礎として古代大和言葉の制定となった。その賢者のグループの代表者がこの原理による理想社会を建設する目的で平地に下り、日本に到着した。日本の建国である。その国の責任者をスメラミコトという。言葉を統一する者、の意である。
 二、スメラミコトは言霊の原理に則り、文字その他の文化を創造し世界各地に広めた。武力のみでなく、光と徳による世界の統一と文明の創造の時代が続いた。人類精神文明の華咲く時代である。古書はこの時代の王朝を、邇邇芸、日子穂穂出見、鵜葺草葺不合の各王朝時代だと伝えている。それは一人の人間の名ではなく、幾人もの天皇が続く王朝の名である。ちょうど神武天皇より現代の裕仁天皇まで百二十四代を神倭朝というごとくである。なお鵜葺草葺不合とは、ウの家屋すなわち科学がまだできあがっていない、という意味である。
 三、三千年ないし三千五百年ほど以前、代々のスメラミコトの政治の方針が変更された。人類の第一の文明である精神文明に次ぐ第二の文明としての物質文明特に科学文明の発達を促進するための方策の採用である。そのためにはまず第一の精神文明の根本原理である言霊の原理を隠没して、人類の言葉を乱し、人間の表面性能である言霊ウ・オ・ア・エの四性能が統一されることなくバラバラに働くことによって、弱肉強食の世界を作り出すことが一番の早道である。それゆえ世界は言霊ウとオの、すなわち欲望と経験知の、他の人間性能をおしのけた独走である権力闘争の時代が始まった。
 精神原理の隠没の方策は、外国ではイスラエルのソロモン王の時の三種の神宝の喪失がそれを示し、日本においては神武天皇の神倭王朝の創立ならびに崇神天皇の時代の三種の神器と天皇との同床共殿の制度の廃止の事実が明瞭に示している。爾来三千年間、暗黒の闘争、戦争のくり返しの時代、その勝利者となるがための物質的優位を保つ目的の科学研究が促進されてきた。
 四、この暗黒の三千年の期間、物質科学が一応の成果を挙げる(その責任者を古事記では須佐男命という)まで、またその成果があがって再び第一の精神文明が人類に甦える時の用意のために、種々の方策が決定された。
(世界の方策)
 A、この時代の主要目的である物質科学の進歩の責任を担うものとして西欧民族特にユダヤ民族が選ばれた。
 B、言霊原理の隠没の代用として、また再びそれが世に現われる時の精神的用具として、各種の宗教・哲学が創設された。この担当地域は主として東洋である(言霊の太陽に対して、その光を反影するものとして古事記は月読命という)。
   現存の世界の大宗教はみな右の目的のためのものである。
 C、やがて甦えるべき言霊原理を比喩、呪物、形式等によって伝統として伝えるために、わが日本において種々の方法が事項された。
(日本の方策)
 イ、言霊原理によるスメラミコトとしてでなく、国民信仰の対象者としての日本皇室の存続が計られた。その内部特に賢所の儀式の数々の〝型〟に言霊の意義が表徴されている。
 ロ、言霊原理の比喩、呪示としての古事記・日本書紀の神代巻の制度である。その内容である神話とは神の話ではなく、神の名の呪示による言霊原理の話である。
 ハ、二十年ごとに遷宮の規定ある伊勢皇太神宮の建立。その内宮の本殿の建築様式を唯一神明造という。その社殿の構造自体がアイウエオ五十音言霊図の構造そのものである。
 かくて、時到り第二の物質科学文明があるところまで成果をあげ得た時、甦える第一の精神文明の原理である言霊原理の担当者は当然わが日本民族である。その責任者は少なくとも日本語を話す人の中から現われることは明瞭である。
 以上が人類の八千年ないし一万年と推定される歴史の骨子であります。詳しい説明は多くの紙数を必要としますので他の機会に譲ることになりますが、このような歴史を背負った私達日本人は世界の現状にどう対処したらよいでしょうか。

歴史創造の原理の伝統を受け継ぐ者として、言霊の原理を完全に復活させ、自覚することが急務でありましょう。
 この三千年の間、西洋は物質科学を中心とした帰納的学問の追求にひたすら従事してきました。古事記のいわゆる須佐男命の思想体系(八拳の剣)の実行者です。一方東洋は月読命としての体系(九拳の剣)である「言霊原理の投影」の宗教哲学を後生大事と護って永い貧困の生活を続けて来ました。この二者はどこまでも平行線を辿る互に相容れないものとしての関係にありました。この三千年の統一のない闇の世に天照大神の十拳剣である言霊原理の世界への再登場が実現するならば、人間の持つことが可能なすべての思想体系が完全に出揃うことになります。このことは人類史にいまだかつてなかったことであり、人類史における新しい夜明けです。人類は初めてその具有する性能のすべてをみずからのものとし、自由にその未来の目的に向かって操作することができる段階を迎えることとなります。科学の莫大な生産物を人類の真の福祉のためにコントロールできる人間精神の統一成就です。各宗教、神話が予言する新しい人類文明建設の始まりです。人類文明の第三期時代が始まります。
 このことに因んだ話をしましょう。奈良の桜井市に大神神社があります。大三輪とも書きます。この神社の鳥居は珍しいことに図のように三つの鳥居が横に連なっています。鳥居の鳥は先に説明がありましたように十理の意で、鳥居とは五十音言霊図を表わします。言霊ウの金木音図(建速須佐男の命)と言霊オの赤珠音図(月読の命)を左右に従えて、真ん中に言霊エの天津太祝詞音図(天照大神)が確立された第三文明時代の人類の繁栄の原理を予告表徴したお宮なのです。三つの輪とは第一・ニ・三文明時代発展の様相を呪示しています。
 しからば言霊の原理から見て、今後の世界・日本はどう変わっていくでしょうか。米ソ対立による世界の危機は回避されるでしょうか。日本民族の将来の世界の中での役割如何。第三文明時代の出発点となる時如何。このような現実の問題に対する具体的な見通しとその対策については、ここでは書くことを差し控えます。その詳細な解説には優にこの本一冊分位の紙面を要しましょうし、世界や日本の将来に感心と憂慮を懐く人が言霊の原理を体得し、それによって現代の歴史を詳しく見直すならば、おのずと把握理解することが可能なことでありますから。言霊の勉学を抜きにして新文明創造への責任をみずからに課すことのない歴史傍観者には、将来への具体的予言はまったく無用であることを、言霊原理自体が教えていることでもあります。
 法華経は言霊を表徴する摩尼宝珠を「その価大千三千」と尊んでいます。その真理の価値は大千三千すなわち宇宙と同じだということです。魂の求道と模索の遍歴の末に、人類が直面する現在の危機を解決する鍵がこの言霊原理より他に存在しないことを知った人は、速やかにこの言霊の門をご自身の心でもって叩かれんことを切望します。あいともに勉学と修練に励もうではありませんか。

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