言霊百神│天津磐境⑥

「吾は(即ち)天津神籬(あまつひもろぎ)及び天津磐境(あまついわさか)を起し樹てて、まさに吾孫の為に斎ひ奉らん」(『日本書紀』)。先天十七神すなわち天名である十七言霊すなわち「天津神諸の命」の体系を天津磐境と云う。磐境は神道の出発の基本であり、そして神籬はその結論であり完成である。ヒモロギとは霊諸招(ひもろおぎ)の義で、宇宙の実相空相の諸要素の悉くを置き足らし、招ぎ祭った仏教の所謂曼荼羅であって、これを天斑馬(あめのふちこま)と云う。梵語のマンダラは大和言葉のマダラが訛った言葉である。仏教の曼荼羅は示すに仏、菩薩の名号あるいはその画像を以てする。神道の斑馬はアイウエオ五十音言霊の配列を以てする。両者の相違点はこれだけであって、その意義は全く同じものである。神籬を説くことは『古事記』を開顕する上の最後の結論である。イハサカの義は五葉坂(境)である。生命の知慧は先天的要素が五つの段階(坂・境)として生成顕現する様相であって、その様相は母音、半母音、父韻、親音の体系として表現される。従来の神道では磐境、神籬の意義は不明瞭であった。或いは甚だ誤って解釈されていた。

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