言霊百神│黄泉国⑭

蛆虫と云われる境涯の人間を禅語で「一切の糞壊上に向って乱咬する底の衆人」などと云うが、それはウ(有、相)すなわち感覚と官能、色気と食気と慾気と云う素朴単純ではあるが、然し精神の全局からすれば一番低級な原始的な知性の境涯に跼蹐(きょくせき)して、それ以外にアオエイの四つの世界が存することを知らず、教わらず、ウの次元のみが宇宙人生のすべてであると思い、その糞壺に譬えられる世界の中で、互いに競い合い、せり合い、争い合って、業縁流転と栄枯盛衰を繰り返し、其処から離脱する機会のない人々を云う。ここで云う蛆はワヲウヱヰである伊邪那美命の世界に於ける歴史的に未開発の渾沌時代であるウの状態を示す意味でもある。
若い人の感情はまだ理性も経験智も充分に熟さない不完全なものであるが、然しその感性としての純粋直観は若い人に授けられた事物の善悪美醜の判断力であって、一々理窟は判らなくとも、例えば若鮎が河水の清濁を敏感に識別する如くに判断して行く。この直観的識別力が鈍った者はも早や青年ではない。斯くの如きが一火を掲げることの効能である。