中国秘伝ひとりあんま気功⑨

単線にあるツボと複線にあるツボ
 人間の体の中には、数え切れないほどたくさんの絡脈がはしっていて、本線である経脈とともに、網の目のように全身をおおっています。
 ところで、ローカル線といっても、風景の美しさや旅の情緒では本線をはるかに上回る線がありますが、絡脈にも経脈に負けないくらい太く重要な気の線路があります。それは、任脈と督脈です。任脈は顔から下腹部まで体の前の中心線を真っすぐにつらぬいた気の線路で、督脈は頭のてっぺんからお尻まで体の後ろ側の中心線を真っすぐにつらぬいた気の線路です。
 しかも、任脈には胃の中心に位置し、胃の病気によく効く中脘、ヘソの穴に位置し、気を養う作用のある神闕など、ひとりあんまには絶対に欠かせないツボがそろっています。また督脈には、体中の気が集まる集会所である百会、気の流れを活発にする要所である命門など、やはりたいへん重要なツボがそろっているのです。つまり、ローカル線だからといって、あなどれない立派な駅がそろっているのです。
 しかし、任脈と督脈のコースを考えてもらえればわかることですが、体の中心線をつらぬいているこの二つの支線は、電車でいえば単線であるため、それぞれの駅は一つしかありません。同じツボは一つしかないのです。
 それに対して、体の本線である経脈は、多少迂回したり、ジグザグを描いたりしながらも、ほぼ体を縦にはしっているのでですが、任脈と督脈と違って、体の中心線をつらぬいて通っているわけではありません。いずれも中心線からは、少し外れているのです。線は一本ではなく、左右対称に二本ずつはしっています(膀胱経だけは、背中で四本の線になっています)。つまり、単線ではなく、複線になっているのです。そのため、経脈ぞいにあるツボは、同じ名前のツボが二つあることになります。

2024年4月
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