松風

 梅の偈の掛軸のある部屋の隣の部屋の前にきました。矢張り襖が開けてあります。見ると同じような床の間に同じような表装の各軸が掛かっています。
 余坐聴松風 (余坐に松風を聴く)
と同じ筆で書かれています。ますます驚きました。心の先天構造の第二則が見事に詩として表現されているのです。
 余坐とは次の座ということです。何の次の座なのか、というと心の宇宙の中に何かが生まれ出でて来たと感じる兆し(言霊ウ)の次の座のはずです。それは「何かな」という疑問が起きると同時に、  図示したように一つの宇宙が主体と客体アとワに分かれます。松の葉は生え際から二本に分かれています。 の形です。この主と客の二つに分かれることを「松風を聴く」と大層風流に詩的に表現したのです。
 二つの詩を続けて書いて見ましょう。
 梅花雪を破って香し 余坐に松風を聴く
心の構造を見事に表現した偈ではありませんか。心楽しくなった私は手帳に二つの偈を書き取ってからもと来た道を引き返しました。観光客相手の若い坊さんの説法は丁度終わろうとしているところでした。

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