気功の鍛錬と陰陽①

気功の鍛錬と陰陽
 伝統医学の理論の中でもっとも重要な陰陽学説は、宇宙に存在するすべての事物について相対する二面性を認め、これを陰と陽に分ける考え方である。天と地、日と月、昼と夜、寒と暑、男と女、上と下、内と外、動と静、水と火、呼と吸、、虚と実等々。こうした両極の間の変化によって、この世の一切は構成されており、また陰陽は事物の発展・変化をうながす動力でもあるとする考え方である。
『素問』陰陽応象大論ではこのことが、「陰陽は天地の道なり、万物の綱紀なり、変化の父母なり、生殺の本始なり」という言葉で表現されいる。気功の鍛錬もまた、この陰陽の考えにのっとって行われている。
(1)陰陽学説の基本的内容
①陰陽の相互対立
 陰陽学説の基本は、まずすべての事物に陰と陽という相互対立的な二面性が存在することを認めることである。これは互いに排斥し合い、闘争し合う関係にあり、したがって事物の変化・発展といういうのは、これらの絶えることのない排斥と闘争の現れと考えるのである。『素問』瘧論の「陰陽の気が上下して抗争が生じ、そのため虚と実とが更々(こもごも)おこり、陰陽の気が相移る」という言葉は、そのことを述べている。
 排斥し争うばかりではなく、さらに両者は互いに牽制しあう関係でもある。一方が過剰になると他の一方が不足の状態となり、たま不足が先に生じると、他の一方が過剰を引き起こす、という具合である。これについて」『素問』陰陽応象大論に「陰勝るときは即ち陽病み、陽勝るときは即ち陰病む」と説明されている。 
②陰陽の相互依存
 陰と陽は互いに対立的ありながら、なおかつ相互に依存しあっている。一方はないまま、もう一方が単独で存在することは不可能である。楊は陰に依存しており、陰は陽に依存している。一方の存在が、他方の存在の条件でなのであり、この関係は一般に「互根」と呼ばれる。『素問』陰陽応象大論には「陰は内にありて陽の守なり、陽は外にありて陰の使なり」として、この関係が表現されている。
③陰陽の相互消長
 互いに対立し、依存しあう関係にある陰と陽は、たとえば四季にしたがって気候が寒暖の変化を示すように、止まった状態としててはなく互いに消長する運動のなかでとらえられている。楊が消えれいけば陰が陰が長じていき、陰が消えていけば陽が長じていく。この過程で、一方がある度を越えて変化したとき、両者の間の平衡が崩れ、陰あるいは陽に偏勝・偏衰といわれる偏りが生じるのである。
④陰陽の相互転化
 陰陽は相対立するものでありながら、その発展において、一方が他方に転化することがある、という考え方がある。陰は陽に転化することがあり、反対に陽は陰に転化することがありうる。これを『素問』陰陽応象大論では「陰重なれば必ず陽となり、陽重なれば必ず陰となる」といい、また「寒極まって熱を生ず」「熱極まって寒を生ず」というのも同様のことを述べったものである。