気功鍛錬と臓腑⑤

(6)その他
 気功では、人体の外表部にある器官の形態や動作が、ことごとく内臓との関連で認識されている。たとえば、宋の張伯端の署名がある『金丹四百字序』には次のように書かれている。「眼を閉じてものを視れないようにすれば魂は肝に在り、耳でものを聞かないようにすれば精は腎に在り、舌を使って声を出すことを止めれば神は心に在り、鼻に香らなければ魄(はく)は肺に在り、四肢は不動であれば意は脾に在る。こうしたことを五気は元に朝(あつま)る(五気朝元)という」。これは中医理論の中の、「肝は目に開竅(かいきょう)する、腎は耳に開竅する、心は舌に開竅する、肺は鼻に開竅する、脾は四肢を主る」の理論とまったく同じ考え方だといえる。したがって、「魂は肝に在して眼より漏らさず、意は脾に在りて四肢の孔竅より漏らさず、こうすれば五臓の神を安んじる」ことができると考えるのである。『金匱要略』にも、「もし五臓の元真が暢(のび)やかに通じておれば、人は安らかで調和のとれた状態でいられる」と述べられており、これも上述の内容を含んでいると思われる。
 気功鍛錬には特異な呼吸法があるが、なかでも呼気の訓練として六字訣が有名である。この独特な発声をしながらの呼気訓練には、その音に対応する臓腑が指定されており、その臓器の病気を治す効果があるとされている。古代の気功家たちは、食物の五味の配合のアンバランスや六欲・七情の偏りなどによっても臓腑は傷つけられるという認識をもっていた。
 六字訣は呵(コー)、呼(フー)、四(スー)、嘘(シュイー)、喜(シー)、吹(チュイー)のそれぞれの音を発しながら息を吐くことによって、これらに対応した心・脾・肺・肝・三焦・腎から、毒気を吐き出させるというものである。と同時に、当然ながら息を吸うときには天地の精気をひと口取り入れ、毒気に代えて補うのである。
 中医理論の五蔵配当の中で、五音として角・微・宮・商・羽があるが、六字訣はこれとはまったく関連がない。その独自性に意義があるといえよう。