気功の基礎研究①

 気功は1995年以降、全国各地で応用されるようになった。その後、五十年代末からいくつかの教育・研究施設や臨床医療機関で、現在の科学機器を使っての実験・観察が開始され、大量の資料が集積されるとともに、気功の理論研究もすすめられ、一定の成果をあげている。
 国外でのこの方面に関する研究は、董経武の『科学気功と生物のフィードバック』によれば、七十年代に入ってから盛んになったとされている。国外での研究のひとつを紹介すると、気功は視床下部の機能を変化させることにより生体に弛緩反応をおこすことを目的とするものである、と結論づけた論文がある。練功者の生理的変化のデータとして、弛緩反応がおこる状態下では、酸素消費量・血圧・心拍数・動脈血中の乳酸含有量などの低下、静止した前腕筋肉中の血流の増加がみられ、脳波にα波があらわれ、交感神経系の活動が全身的に低下することが観測されている。国外におけるこうした分析結果は、わが国の五十年代になされた研究結果ともほぼ一致するものである。しかし残念なことに、世界に先駆けた我が国の研究は政治的な圧力を真っ先に受け、十年間、中断せざるをえなかった。やっと一九七七年になって、気功の原理研究は「外気」の研究から再開されることになった。つい先ごろ、わが国の著名な科学者である銭学森氏は、次のように発言している。「人間の持つこころの能動性が、人体内部の活動を調整しうる、という認識はまったく新しい認識だ。そこで、まだ一般に認識されていないがゆえに利用されずにいる能力のことを、気功では人の潜在力と説明しているのである」。
 要するに現在まで明らかにされていない人間の生命の秘奥を探り、生命科学を未知の領域にまで推し進め、人の持つ潜在能力を引き出すことによって人類を健康と長寿に導くために、臨床・学習・基礎研究を組織化し、協力しあって継続的に気功の原理研究を行っていかなければならないのである。それぞれの部門が相当な力を蓄え、専門の気功研究施設を建てて各科による総合的な研究が推し進められるようになれば、第一級の資料を収集・分析することができるようになり、近い将来、気功の原理が解明されるものと思われる。 

2024年4月
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