⑤呼吸の練習
出る気は呼、入る気は吸であり、呼と吸の両者は異なる働きがある。清の薛陽桂は『梅華問答』の中で次のように語っている。「人は一呼一吸の関係は些少(さしょう)のことではない。一吸とは天地の気を自己に帰属させることであり、一呼とは自己の気を天に還すことである」。しかも、陰陽の属性からいえば、両者は一つは陰に属し一つは陽に属する。たとえば、『聖済総録』では、「おしなべて入る気は陰であり、出る気は陽である」と書かれている。それゆえ、作用からいえば、呼気は外に向かって広がり、吸気は内に向かって収斂するものである。『東医宝鑑』には、「呼とは気を出すことであり、陽は開くものである。吸とは気を入れることであり、陰は閉じるものである」と書かれている。動物実験によると、呼と吸はそれぞれ別々に交感神経と副交感神経に影響を与えており、内蔵に対する働きも完全に異なっている。このため、一般的な調息方法以外に呼と吸の練習では異なる方法がある。私たちは臨床においても、呼気の練習は高血圧症、肺気腫、緑内障および頭部の諸症状が明らかであり胸腹部に膨満感がある者には比較的気持ち良いことを観察している。吸気の練習は、胃腸の機能が劣り、陽虚で寒がりの者には比較的適している。
一般的にいうと、呼気を練習する時には、呼気を延ばす、吐いて止めて吸う、呼気の後に字句を音を出して読むなどの方法によって、呼気を強化する。吸気を練習するときには、吸気を延ばす、吸って止めて吐く、吸った後に字句を音を出して読むなどの方法によって、吸気を強化する。しかし患者の陰陽の弁証に注意を払わなければならない。六字訣もまた呼気の練習法である。
⑥数息、聴息、随息、止息
これらはともに意識との結合を強化する呼吸鍛錬法である。
数息…鼻端から出入りする呼吸数を心の中で数える。数を一から十まであるいは百までを繰り返し数える。呼気を数えても吸気を数えともよい。それぞれが呼気。吸気の練習である。
聴息…耳で自分の呼吸の出入りを黙って聞くが、回数は数えない。
随息…意識を鼻端の呼吸の上下出入に集中するが、回数は数えない。
止息…呼吸が一定の程度に調整され、呼吸の出入りが深く長くかつ柔軟であり、呼吸しているようでしていない状態になっていることを指す。
情緒があまり安定しておらず、雑念がかなり多いときには、数息、聴息を用いる。比較的落ち着いているときは、随息を用いる。止息は深長かつ規則的な呼吸を体得することであり、無理やり練習してもできるものではない。
⑦呼吸鍛錬における舌の動き
呼吸を鍛錬するときに、舌の動きを組み合わせてもよい。その方法は舌の先を口蓋につけて動かさないものと、吸気のときに舌の先を口蓋につけ、呼気のときに自然に離すものがある。口蓋につけて動かさないものは、口の中の津液(唾液)を増やし、舌を付けたり離したりするものは安静が得やすくなる。