気功の方法…呼吸の鍛錬⑦

(6)呼吸鍛錬における生理的機序
 人の呼吸運動は、呼吸中枢の支配を受けて絶えず活動し続けており、普通は意識的に調節はない。しかし、気功で求められる特有な呼吸の型は、意識が関与・誘導することによってのみ行うことができる。気功で求められる特有な呼吸の型は、人体にとりよい影響を及ぼす。
呼吸の鍛錬は自律神経に対し、一定の調節作用をもつ。自律神経系統は交換神経と副交感神経に分けられ、この両者は絶えず相互に対立、協調、依存しあっており、人体の内臓器官が正常に働くように作用している。両者のうち一方が亢進あるいは低下すると、内蔵機能が失調し、いろいろな病気がおこる。たとえば、交感神経が相対的に強まっているときには、心拍促進、血圧の上昇、血管の収縮、胃腸の蠕動運動の亢進などの症状が現れる。動物実験により、呼気中枢の興奮が大のときには、副交感神経に拡散し、吸気中枢の興奮が大のときは、交感神経に拡散することが証明されている。臨床的にも、息を連続して吐き続けると、血管は拡張し、血圧は下降し、また、息を連続して吸うと、血管は収縮し、血圧は上昇するなどが観察される。このことは動物実験からも証明され、意識的な呼吸鍛錬が自律神経系統を調節することから、人の意志によって内蔵器官の活動機能を調節あるいは改善できるという可能性が明らかにされた。
腹式呼吸は、つまり横隔膜呼吸である。横隔膜は胸郭の底部で肺の下面に位置する。腹式呼吸のときは、息を吸うと、横隔膜は収縮し、横隔は下がり、ふいごを引くように、胸腔の上下幅と胸郭下部の横幅を広げて、空気を大量に収める。息を吐くときは、横隔膜を緩めて横隔を持ち上げ、胸隔を小さくして、空気を出す。横隔を1㎝上下させるだけで、肺の通気量を二五〇~三〇〇ml増加させる。観察によると、腹式呼吸は横隔の上下幅の動きを増加させことができる。以前行った一〇例の横隔膜運動描写器による波状曲線の撮影によると、一例は気功をする前は二・五㎝だったが練功中に九㎝にまで振幅が広がり、残りの九例はそれぞれ三・四~六㎝増え、平均は五㎝であった。肺の通気量が大幅に増えることにより、呼吸機能は強まり、肺の循環が促進され、血液中の酸素も増えている。酸素の供給が増えると、神経系統の機能も高まる。
③臨床における実践がさらに証明しているように、練功者は腹式の呼吸鍛錬により、横隔膜の上下運動の幅を大きくすると同時に、腹部の各筋肉群の収縮能力を強めることができる。このようにすると、胸腹腔の血液循環を改善するばかりか、横隔膜運動を活発にして腹腔内の各器官に対して按摩的な作用を発揮する。さらに胃腸の蠕動を促し、食物を消化し栄養を吸収する働きを強め、全身の栄養供給をそれ相応に強め、各器官、系統の機能を高めることができる。