気功の方法…意念の鍛錬④

(3)常用される練意方法とその応用
 錬意の中心となる内容は、意の集中およびその応用である。常用される方法には以下のものがある。
①身体のリラックスに注意する
 意識的に身体をリラックスさせることが、練功のもっとも基本的内容である。練功を始めると同時に、姿勢が安定しかつ妥当なものであるか、快く自然でリラックスしているかに注意を払わなければならない。また同時に、すべての練功過程で、絶えずリラックスに注意を払うようにして、各種の緊張状態を取り除くようにする。もしこのように意識的に姿勢を正し、身体をリラックスさせる方法には、放松功がある。
②身体のある部位に注意する
 身体をリラックスすることに注意を払って、身体全体が比較的安静な状態になってから、身体のある部位を注意することを、通常「意守」あるいは「凝神」という。常用される意守部位は、すべて経絡上のツボである。注意をあるツボに集中することは、一つには、雑念を効率よく取り除くためであり、もう一つは注意するツボの違いにより、身体内部の気血の運行と臓腑の機能に対して異なる反応を引き起こすことである。たとえば、高血圧症の病人では、頭部のツボへの意守と腹部・下肢のツボへの意守とでは、血圧の昇降に対する影響が明らかに異なる。
 一般に常用される部位は、臍中あるいは臍下が主であり。湧泉・大敦・足三里・命門・少商・中衡でその他の部位は補足的に用いられる。
臍中…一般的に意守できる部位である。つまりヘソである。『難経』八難の中で次のように指摘している。「十二経脈それぞれすべて生気の源に係る。いわゆる生気の源は十二経脈の根本であり、腎間の動気をいう。これは五臓六腑の本であり、十二経脈の根であり、呼吸の門、三焦の源であり、守邪の神ともいう」。我々は『難経』の中で指しているこの部位こそ臍中であることを体得した。元代の兪琰は『周易参同契発揮』の中で「嬰児は母親の胎内にいて、母が息を吐けば嬰児も吐き、母が息を吸えば嬰児も吸う。嬰児の口鼻は閉じているので、臍によって呼吸する。ゆえに臍は生命の根本であり、気の蒂(根本の意)である」といっている。『摂生三要』ではさらに「臍内に存神するものは、生命の根本に連なり、呼吸が通じており、このために元神(脳)を養い、厚腸開竅ができる」と指摘している。このほか、『東医宝鑑』の中では、「臍は斉(きちんとそろっている意)に通じており、上下がそろい、身体の中間に位置している。したがってこれを臍中というのである」と書かれている。このため、臍中は単に元気の根本であるばかりか、臍が人体の上下の正中部位にあるので、人体の上下のアンバランスを調整するのに有効である。
足の三里…膝下三寸の外側の陥凹部にあり、足の陽明胃経の合穴である。腹部の膨満感・疼痛があったり、食欲減退のときにこのツボを意守する。このツボは脾胃の運化機能を強める作用がある。王執中の『鍼灸資生経』の中では「もし平穏に過ごそうと思うなら、丹田・足三里の灸瘡を絶やしてはいけない」とある。日本では足三里を長寿穴という。
大敦…足の第一趾の外側にあり、足の厥陰肝経の井穴である。頭がしめつけられる、頭が痛いといった場合は、このツボに意守すると症状がかるくなる。これが上病取下(身体上部の疾病を下部のツボを用いて治療する)の意味である。
湧泉…足底の前三分の一の陥凹部にあり、足の少陰腎経の井穴。陰虚火旺、夜ぐっすり眠れない、頭がしめつけられる、頭が痛い場合はこのツボを意守するとよい。
命門…第二腰椎下にあり、ちょうど臍の後に相当する。督脈のツボである。腎虚、腰のだるい痛み、あるいは陽虚で寒がりの人に適する。
少商…手の拇指の橈側の爪甲の角にある。手の太陰肺経の井穴である。せきや喘息に適する。
中衝…手の中指端の中央にある。手の厥陰心包経の井穴でる。心気不足や動悸に適する。

2024年4月
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