気功…さまざまな動功整体②

第8節…五禽戯

五禽戯は、動を中心に据えた古代の気功鍛錬の方法である。この方法は、後漢時代の華佗(一四一~二〇三)が先人の「流水は腐らず、戸の枢はいつまでも虫に喰い荒らされないものだ。いずれも動くからだ」との考えに共鳴するところがあって、前漢時代のゆうけいちょうしん・ふよくえんかく・ししここの鍛錬動作に啓発され、虎・鹿・熊・猿・鳥(鶴とする説もある)の五種の鳥獣の動作を観察して編み出したところから、五禽戯と名づけられた。これを鍛錬すれば、強身却病、延年益寿の効果があると言われている。 『後漢書』方術列伝には、華佗が弟子の呉普に五禽戯を授けたという話が記載されている。それによると、華佗は次のようにいった。「人の体はよく動かすがよい。だからといって、動かし過ぎて疲れ切ってもよくないが。運動すれば穀物の気が消化され、血脈は流通がよくなり、病気は起こりようがない。た、とえば戸の柩がいつまでも錆びつかないようなものだ。そこで、昔の仙人は導引というものをした。熊経鴟顧などで、身体を引き延ばし、諸々の関節を動かして、できるだけ老け込まないように気をつかったのである。私には一つの術がある。五禽の戯というものだ。一に虎、二に鹿、三に熊、四に猿、五に鳥である。これも病気をなくするとともに、足を達者にするもので、導引というものに相当する、体が不快なとき、起きて五禽の戯のどれか一つをやれば、体はほぐれて汗が出る。そこに粉をつける。体は軽くなって食欲が出る」と。そこで、呉普がいわれたとおりに実践したところ、「年九十余りで、耳も目もはっきりしており、歯もそろって丈夫であった」。 五禽戯という呼び名は、もとはといえば、五種類の動物の動作を模倣したところから付けられたものである。その中の四種は獣で虎・鹿・熊・猿であり、一つは禽で鳥のことである。それをまとめて五禽と言ったのは、おそらく華佗が、後漢時代の班固が、『白虎通義』の中で「禽は鳥獣の総称である」と述べていることに従ったためだろう。もちろん、『爾雅』の中では、獣禽は「二足で羽を持つものが禽で、四足で毛におおわれているものを獣という」と別のものとして解釈されている。だが、この五禽戯の功法についていえば、当時はまだ文字化されていなかったようである。 現存するものの中でもっとも古い五禽戯の功法は、南北朝時代の陶弘景(四五六~五三六)が編纂した『養性延命録』の中にみることができる。陶弘景は華佗より下ること三百年後の人だから、華佗のオリジナルとはいえない。だがオリジナルに近いと考えられている。

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