東洋医学.08

五臓の働き<肝>

①血を貯蔵し、消化を助ける“肝”
 肝は、全身の気のスムーズな調整を図る疎泄の機能と、血を蔵する機能を持っています。
 蔵血作用とは、血液中の血流量を調節する働きの事です。疎泄機能は全身の気の働きを調節することで、これにより、臓器や組織の気は気化や推動といった作用を滞りなく行うことができます。
 疎泄機能によって、全身の生理活動に関わる気を支配するため、肝の失調は、他の臓器へも影響をもたらします。例えば、肝気の疎泄が失調すると、相克関係にある脾や胃の昇降・運化機能が失調し、ゲップや嘔吐などの上逆症状があらわれます。
 肝と関係が強い部位は、筋(腱、靭帯)、爪、目です。また肝は魂を備え、判断力や計画性などの精神活動を支配するため、感情面への影響も大きいです。
②感情に深く関わる肝の変調
 肝の造血機能と疎泄機能が低下すると、気、血、津液の働きに影響します。
肝血が不足すると、身体の各部に栄養失調がおこるが、とくに影響を受けるのは筋と爪と目とされます。筋の栄養が不足すると、運動機能の低下、手足のしびれ、痙攣のほか、筋の延長と考えられている爪も変形が見られます。
 また、肝と目は経脈でつながっているため症状が出やすく、肝血の不足は疲れ目やかすみ目を引き起こします。
 気の流れをつかさどる疎泄機能が低下すると、血と津液にも停滞がおこり、血瘀や痰湿を生じるようになります。疎泄機能はストレスなど感情の変化を受けやすく、脾の消化吸収や胆汁生成を促進する機能も低下させます。その結果、消化不良や腹痛、下痢、吐き気などの症状が、また胆機能の低下により、口が苦い、黄疸、耳鳴りの症状が現れます。
 肝は感情の変化にも関係しています。肝気の疎泄が過剰になると、イライラや怒りを生じやすく、逆に不足すると抑鬱状態になりやすく、ほかにも、肝は心が蔵する神の統率を受けます。人の七情は、神によって調節されているため、心の不調により精神状態が不安的になると、肝も不調に陥りやすいのです。

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