東洋医学.09

五臓の働き<心>

①血脈と神志をつかさどる臓器
 心には、血を全身に循環させるポンプのような働きと、精神や意識、思考をコントロールする二つの働きがあります。
 血を全身に送るのは、心気の推動作用によるもので、この働きによって血の栄養分を、臓腑や組織に行きわたらせることができます。西洋医学でいう心臓とおなじような働きと考えられます。
 また、心には5つの神を統制し、意識と精神をつかさどる神志が存在します。そのため、心は精神や意識、思考をコントロールする働きを持っています。
 心と関係が強いものは、汗、顔、舌とされ、心の状態によって汗の出方、顔色、舌苔や舌の色の状態が変化します。また、心気は小腸の消化吸収にも関わり、胃で消化された飲食物は、小腸で水穀の精微と糟粕に分別されるが、心気の熱が小腸に伝わることで、分別がスムーズに行われます。
②循環・精神・排泄の不調を引き起こす“心”の変調
 血を循環させる心の機能が低下すると、身体のあちこちに血行障害が生じます。なかでも顔は血脈が多いため症状があらわれやすく、健康なときの顔色はつややかで血色がよいのに対し、不調時は青白く、唇は青紫色になります。心は、血行障害を改善するために、あるいは、心自体に生じた血の不足を解消するために、拍動を増やすいよう働きかけます。その結果、動悸や不整脈、胸内苦悶、胸痛などの不調が生じます。また、貧血や手足の冷え、息切れ、脈の空虚などの変調も見られます。
 汗は心の液、舌に開竅(五臓の症状があらわれる部位)するといい、心の状態は汗や舌に反映しれます。汗は津液が心陽(陽気)によって気化されたもので、心陽が亢進すると発汗します。舌がもつれて言葉が出ない発語障害、食物の味がわからない味覚障害まども、心の変調が舌にあらわれた症状とされます。
 また、心には精神、意識、思惟活動などをつかさどる神志が存在します。心血の不足は、神志や神の働きを低下させるため、そわそわする、落ち着かない、不安感、判断や記憶力の低下、意識混濁や知覚異常などの症状が見られるようになり、不眠や寝つきの悪さ、多夢といった睡眠障害も生じます。

2024年4月
« 3月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930