東洋医学.10

五臓の働き<脾>

①運化、昇清、統血をになう“脾”
 脾は、運化をつかさどります。運は運搬、化は消化を意味します。つまり、飲食物(水穀)を消化・吸収し、人体の栄養分である水穀の精微を生成し、全身に運搬するのが、脾の運化作用です。実際の消化は胃と小腸が行うが、コントロールは脾の運化作用によります。また脾は、水液の運化もにない、水穀の精微から水分を吸収し、津液として全身へ運搬します。この際、肺の働きの補助を受け、すみずみまで津液が行き渡ります。
 脾の上へ持ち上げる昇清作用をもちます。水穀の精微が小腸から心肺など、上部へと移動できるのはこの作用のおかげとされています。また、血が血脈からしみ出るのを防ぐ統血作用もになっています。脾が弱ると血尿など、出血しやすくなります。
 脾と関係の強いのは涎(よだれ)と筋肉(皮下脂肪)、口や唇とされ、脾が弱ると変調が見られやすいです。
②消化不良、全身失調を生む“脾”の変調
 水穀の精微の運化作用が低下すると気・血の生成が不十分となり、臓腑や組織に必要な栄養分が行き届かなくなり、気と血の不足による無気力や貧血といった直接的な症状のほか、気と血の滋養を受けられなくなった臓腑、経絡にもさまざまな病変を生じます。また、水液の運化低下は、津液の停滞、ひいては痰湿を引き起こします。痰やむくみが生じるほか、痰が肺へと移動すると、喘息や咳症状があらわれ、ほかに、胃にも影響を及ぼし、腹痛、満腹感、口臭などの異常もおこります。
 持ち上げる機能である昇清作用が衰えると、気や栄養分が上方へ送れなくなります。たとえば、食後にもよおす眠気は、消化吸収に気と血を消耗し、気を心に送るための昇清機能が低下しているためと考えられます。また内蔵を持ち上げられなくなり、胃下垂や脱肛、慢性下痢などの症状も引き起こします。
 統血作用が低下すると、体外に血が漏れ出すようになり、血便、血尿、皮下出血、月経過多などが生じます。
 脾の失調は肌肉や口、唇にあらわれ、運化が低下し栄養が供給されないと肌肉が落ち、痩せていきます。またよだれは脾の液とされ、口の中が乾燥し飲み込みすらくなり、よだれが過剰で口から流れるなどの症状がおこります。

2024年4月
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