東洋医学.19

中医学の臓腑とは

 『素問』五臓別論篇では、五臓とは精気が蓄えられ充満していることで働くのに対し、六腑は中空(虚)で、食べ物やその代謝産物が送られてきたときだけ充ちる(実)状態になって働きます。寄恒の腑も中空だが、中に精気を蓄えている点では五臓にちかいとみます。
 古代中国には解剖学的な知識も存在したが、臓腑の形態と働きに対する認識は、人間に対する細かな観察から形成されました。体表のさまざまな部分の変化から、臓腑の働きや病変を考えることが臓腑論の中心となり、そこから臨床における診断と治療を考えていったのです。中医学の臓腑論を蔵象学説といいますが、「蔵」とは内臓の生理や病理のことを指し、『象』とは臓腑の生理的・病理的状態が外にあらわれた現象のことを意味します。中医学の臓腑論のもうひとつの特徴は、臓腑を単独のものとして見ないことです。たとえば風邪をひくと寒気がして、くしゃみや鼻水が出ます。されに肺による呼吸が変動して、咳や痰が出始めます。そのため古代中国人は、人体のあらゆる部位の生理や病理は、五臓を中心に有機的に統合された生命活動の一部と考えたのです。つまり中医学における肺とは肺自体の機能ではなく「肺の系統」を意味し、人体のあらゆる病変は五臓六腑と関連していると考えたのです。

2024年4月
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