酸化した脂肪の危険
ところが残念なことに、不飽和脂肪にも、まだあまり知られていない、それなりの危険がある。脂肪酸の連鎖が不飽和であることの特徴は、不安定で、非常に参加しやすいということにある。とくに、空気中で熱を加えた場合、または空気にさらしておいた場合はすぐに酸化する。そして、酸化によって生じたきわめて反応性の高い分子は、DNAをはじめとする、細胞の重要な構成物を破損する恐れがあるのだ。したがって、多不飽和脂肪の多い食生活はガンになるリスクを高め、老化と組織の変形の速度を早め、炎症性疾患や免疫疾患を悪化させる恐れがある。
脂肪が酸化すると危険な成分を生じると同時に悪臭を生じるから、臭いを嗅ぐことによって変質が察知できる。脂肪の腐敗臭を知らない人には、臭覚を訓練して、識別できるようになることをお勧めしたい。ほんのわずかでも臭う油脂は、けっして口にしてはならない。ナッツ類・ポテトチップ類・クラッカー類など、脂肪の多いものを食べるときは、いきなり口に運ばずに、まず臭いを嗅いでいただきたい。密封されたスナック食品は添加物で臭気を消してあっても、わずかな臭気が機密包装の中で濃縮されているため、包装を開いた瞬間に臭うことがあるのですぐ分かる。不飽和性が強ければ強いほど、空気に触れると早く酸化して悪臭を放つ。亜麻仁油は非常に不飽和性が強く、急速な酸化によって化学構造に変化が生じ、乾燥して硬くなる(それが油性ペンキの基剤に使われる理由である)サフラワー油は他の食用油に比べて、はるかに早く酸化してしまう。最近になって食用油として脚光を浴びる前、サフラワー油は亜麻仁油と並んで「乾性油」に分類されていたのである。
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