ナチュラル│記憶力減退

記憶力減退
カルテをとるとき、「記憶力はどうですか」と聞くと、急に慌てる患者がいる。たいがいの人は「昔に比べると堕ちましたね」とか「ひどいもんですよ」などと答える。アルツハイマー病が有名になると、記憶力減退を心配する人が非常にふえてきた。わたしの経験では、記憶力の減退そのものより、それにたいする心配のほうが問題である場合が多い。記憶力が減退していると自分で思っている人のほとんどが、実際にはそうではないからだ。
記憶の秘訣は注意の集中にある。何かがあって、それを覚えていたいと思っても、注意が他にそれていたら、いくら記憶力がよくても覚えられない。そして、注意の集中の秘訣は動機の強さである。じつのところ、われわれの多くは自分で思っているほど記憶することに強い動機を、つまり興味をもっていないのだ。歳をとったら、記憶力そのものが衰えるよりも、動機の方が変わるのだと考えたほうがいい。
だから、記憶力について心配する必要はない。その気になれば覚えられるし、忘れたからといって、どうということもない。この本で紹介しているようなライフスタイルで生活し、抗酸化食品を食べ、こころを活発にしていれば、歳をとっても自分の記憶力を頼りにできるようになる。
それでも気になる人には、一つだけ生薬を処方しよう。イチョウの葉からつくる生薬だ。イチョウは古くからある中国原産の木で、一時は珍しかったが、いまでは街路樹として世界中で見られるようになった。雌の木には銀杏がなり、中国料理や日本料理に使われている。最近、イチョウの葉のエキスが脳の血行をよくすることがわかり、研究者の注目するところとなった。イチョウの葉エキスはたいがいの健康食品で売っているが、商品によって活性成分(ギンコライド)の含有量が大幅に違うので注意を要する。記憶力増進のためならば、1日2回、2カプセルずつを、2カ月飲んでみるといい。イチョウは無毒である。

2024年4月
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