ナチュラル│腰痛(急性)

腰痛(急性)
背部、とくに腰部は突然激しい痛みに見舞われ、身動きひとつできなくなる急性の腰痛(背部痛)は、人類だけが味わう不快な症状である。この災難は重い物をもちあげたり、脚がもつれたり、転倒したりしたときに起こることがあるが、何もないときに原因不明のまま起こることもよくある。ウイルス性の疾患が急に悪化して起こる場合もあるし、感情的なストレスからくる場合もある。痛みが電撃のように襲ってくる場合もあれば、何時間、または何日もかかって徐々に募ってくる場合もある。もっともひどい急性腰痛は人を赤ん坊のように無力にさせ、患者は他人の助けがなければ起き上がることも、食べることも、顔を洗うことも、着替えることもできなくなる。おずおずと歩いても、用心深く動いても、軽く咳をしても、強烈な痛みで息がつまる思いがする。
急性腰痛の圧倒的多数は筋肉の痙攣から生じる。分娩時の女性が証明しているように、筋肉が強く収縮したときの痛みは信じられないほど強烈なものである。急性腰痛になった人の多くが思い浮かべるのは椎間板ヘルニア・神経圧迫・脊椎転位・靭帯か筋肉の裂傷などだが、実際には強烈な筋肉の痙攣が唯一の、もしくは主たる原因であることがほとんどである。尿失禁、脚の皮膚の異常感覚や感覚麻痺、脚と足の運動不足などがある場合を除いて、筋肉の痛み以外のものだと考える理由はない。患部には急速に炎症が起こり、熱を感じることもある。
腰の筋肉を痙攣させているのは脊髄からくる神経の反射であり、これが悪循環を形成して、痙攣と炎症がさらなる痙攣と炎症を招く。その循環は筋肉の損傷に対応して起こっているわけだが、真の原因は脳にあることが多い。脳の脊髄をつうじて筋肉の生理に干渉していると考えられる。急性の背部痛(および頚部痛)はストレスのあらわれであることが多いということだ。これこそ真の心身相関症状…「すべてはこころの問題」という意味ではなく、こころと脳と神経と筋肉との複雑な相互作用という意味で…である。脳が筋肉機能にひずみを生じさせ、身体的ストレスにたいして自由に応答させないようにしていることが、腰痛となってあらわれている。そう考えれば、何でもないような屈伸運動や捻転運動によってひどい痙攣と炎症の悪循環が起こるメカニズムも説明できる。
急性腰痛が起こったら、まず患部を冷やすことだ。痛みの緩和には、どんな治療法よりもアイスパック(冷罨法)が有効だ。患部を15分~20分間冷やして、あとは1~2時間おきにこれを繰り返す。膝を立てて仰向けに寝ることしかできないときは、腰の下にアイスパックを敷いて、その上に寝ていればいい。初期のあいだは温罨法をすると痛みが悪化することが多い。
少なくとも最初の1~2日は、絶対安静にして動かさないことが治療の決め手になる。無理をして仕事などに出かけようとすれば、ツケはあとにまわってくる。回復期間が長引くか、痛みがひどくて動こうにも動けなくなるかのどちらかである。
痛みがますような姿勢を避けて、少しでも楽な姿勢をたもつことが大切だ。床や椅子に座ってはならない。どんな簡単なことでも自分でせず、誰かに頼むことをためらってはならない。椅子のそばに仰向けになって両脚をあげ、膝を直角に曲げ、ふくらはぎの下に椅子のシートがくるように置いてもらい、そのままの姿勢で休むのもいい。歩ける人は、右の仰臥姿勢の休息時間に少し歩くのもいい。
急性筋痙攣に良く効くホメオパシーの薬がある。30Xに稀釈したモンタナウサギギク剤で、たいがいの健康食品店で売っている。これは打撲などの外傷にも効くので、非常用に家庭の常備しておくといい。痛みを感じたら出来るだけ早く、これを4錠のむ。あとは寝るまで1時間おきに4錠ずつのむ。翌日は2時間おきに4錠にへらし、その翌日からは1日に4回、4錠ずつにする。4~5日は続けるといい。ホメオパシーの錠剤は舌下に含み、溶けるのを待たなければならない。舌下に含ませる前後の30分間は、口に何も入れないようにすると効果が高い。また、カフェイン、ミント(歯磨き)、樟脳(筋肉用塗布剤などに入っている)を避けると一層効果がある。
呼吸も有効である。痛み出したら、ゆっくりした深い意識的な呼吸を続け、体内にイメージした縦の輪に沿って息を下ろしていき、下腹部から腰の痛む場所を通って鼻から吐き出すというサイクルを繰り返すのもいい。呼気と吸気のあいだをできるだけ短くして、スムーズで連続的な呼吸をするように。これは呼吸をコントロールすることによって神経系に直接働きかけ、その弛暖を促すのである。
感情は筋肉と神経の相互作用に大きな影響をあたえるので、できるだけ楽しい気分でいることが大切だ。
痛みが引き始めたら、温めることが治療を早める。まず、温冷湿布を試みていただきたい。温湿布と冷湿布を繰り返し、最後に温湿布で終わる。温湿布が気持ちいいと感じたら、その後は温湿布だけでにしてもいい。
一度腰痛になって筋肉がそのパターンを覚えると、何かのストレスで再発しやすくなる。腰痛になる前に筋肉のこりや軽い痛み、不快な感じなど、初期の警告信号がなかったかどうか思い出してみるといい。もしあれば、その信号をキャッチしたらすぐ、痙攣や炎症が起こらないような行動をとることである。
腰痛に見舞われたとき必ず思い出してほしいのは、「いちばん心強い味方は時間だ」ということである。

2019年12月
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