気功に関する問題│入静

入静に関する問題
(1)入静をどのように理解するか
「入静」とは練功過程において、意念の集中によって得られる、練功者の覚醒した状態であり、外界と断絶した状況のもとに現れる、高度な安静と緊張のない快適な状態である。この状態は、自律神経の機能を調節するのに有利であり、大脳と内蔵の間の正常な機能を調節し回復するのにも有利である。また、外界の有害な刺激に対する保護作用もある。中国医学でも、入静は人体内の病気に対する抵抗力をもつ真気が集まり強まるときであると認めている。
入静時は、大脳皮質は決して完全な抑制状態ではないので、入静は正常な覚醒状態とも異なるし、また入睡とも異なる特殊な状態である。入静とは「いろいろな思いがすべてやみ、寂然としてあらゆる物がなくなる状態」でもないし、熟睡の「何も知らない」状態でもない。なぜなら、入静は練功の意念を保ち続けているからである。練功者からいえば、意念が全く無くなってしまったなら、偏差を起こすので注意すべきである。
(2)入静の深さ
一般的にいえば、入静は練功で把握でき、練功の質が高い状態のもとで現れるものであるので、練功の実践を通じて獲得できる。そのため、入静は意識的な練功の、無意識的な状況下で形成され出現するものといえる。入静の程度を大まかに描いてみる。
初級…姿勢は自然で快適であり、呼吸も穏やかであり、各種の雑念も相対的に少なくなるか、あってもすぐに排除できる。このような練功の過程では、1、2回、短時間内に雑念がおこらないとか、安静で快適な状態を感じる。
中級…初級を基礎とし、外界の雑音が耳に入っても聞こえない、身体が軽い、用意が思い通りになる。呼吸が綿々と続く、軽い・重い・温かい・痒いなどの快適な感覚が常に現れるのが中級である。
上級…中級を基礎とし、外界の干渉にすでに反応しない、呼吸が綿々として深く長く、呼吸しているようで呼吸していないようである、用意が思い通りであるようでないようである、感覚が深まり、身体全体が虚であり、軽々と漂っている感じである、頭ははっきりしており精神状態もよい、練功後、あたかも淋浴したかのように、心はのびのび快く、元気があるなどは上級の入静状態である。
入静は文字で完全にはっきりと表現できるものではないので、それぞれの人が体得しなければならない。
(3)入静中において注意すべき問題
入静の最中に注意すべき問題は入静を追求しないことである。追求すること自体は意識的であり、興奮状態であり、追求すると必ず入静の出現と持続に影響を与えていまう。我々は自然にもとの状態を保たなければならない。無理に求めなければ、かえって予想した目的に達成する可能性がある。
(4)入静に関するいくつかの問題
入静と次の述べる問題には、直接的あるいは間接的な関係があり、これら問題をうまく把握すれば、入静の出現に有利である。
下準備…下準備が十分であれば入静しやすい。我々は練功しないときは、注意を仕事、学習、生活に集中するが、練功のときは自己の身体に集中することが要求されるので、練功における精神、情緒を養う過程が必要になる。時間的には5~10分。このようにすれば、練功中の雑念は減り、部位の意守はしやすく、このことにより入静する。
情緒…練功前、練功中、楽しく楽観的であれば入静しやすい。
周囲の環境…周囲の環境が静かであれば入静しやすく、このことは入静に有利な条件である。
健康状態…練功中の疾病は程度の差はあるが、入静に影響を与える。適当な措置を講じて臨む必要がある。
姿勢…姿勢は快適自然な状態に置かなければならず、生活や生理的な法則に反してはならない。
呼吸の鍛錬…呼吸が柔和で自然なときには、入静しやすい。
精神類型…せいしんがどのタイプであるかが、入静にも関係してくる。神経を類別すると大きく4つに分けられる。興奮タイプ、活発タイプ、安静タイプ、抑制タイプである。臨床的には、同一環境、同一条件、同一方法でも、人によって練功入静に大きな差がでることがみられる。そのため異なった誘導方法を採用したい。ただしかなり細かく複雑であることをご理解していただきたい。神経衰弱の人、せっかちな人は入静しにくいのである。精神類型を改めることはできるし、練功そのものが改める方法なのである。

2024年4月
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