西野皓三│左脳摘出手術②

左脳摘出手術を受けた患者の驚くべき状況②
その左脳摘出手術は、外科医ピーコック博士が行いました。左脳を摘出した人間が、はたして生きていけるのだろうか、またさまざまな障害が起こる可能性があるのではないかという懸念はありましたが、博士は小さな生命力の持つ、無限の生命力に賭けたのです。
9時間に及んだ世紀の大手術は成功しました。
一般的に、右脳は左半身の働きや、音楽的能力、想像したりする能力を司り、左脳の右半身の動きや、数学的能力、言語能力を司っていると言われます。左脳を取り出してしまったオースチンには右半身の障害や、言語が理解できなくなるという可能性があった。ことに言語能力はちせいそのものと言えるほど重要な能力です。左脳をとってしまうということは、オースチンから知性を奪ってしまうことになるのです。
ところが、この若い生命力は、驚くべき速さで奇跡の徴候を示し始めたのです。
数か月後、オースチンは両手両足をバタバタ動かしたのです。退院したオースチンは一人で座り、おもちゃにも関心を示しました。さらに徐々にではあるが、人の言葉を理解し始めたのです。
なぜ、彼は左脳を失っても、左脳が司るはずの言語理解能力などを失わずに済んだのでしょう。
検査の結果は、常識を覆すものでした。通常、脳は10歳ぐらいまで成長を続けます。彼の右脳は、失われた左脳を補おうと驚異的な発育を遂げ、右脳が左脳の機能も果たすようになったのです。
オースチンはまったく普通に話せるようになっています。5歳になった現在、オースチンの右半身に多少の障害は残るものの、友達と同様に走り、学び、元気に幼稚園に通っています。
奇跡とも言うべき回復を遂げ、彼の右脳はさらに成長を続けているのです。

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