西野皓三│DNAと知性②

DNAが人間の知性を創った②
その細胞の一つひとつの中に巨大分子であるDNAがあります。このDNAは四つの文字(塩基)で構成され、その文字の数は約30億。30年分の新聞の情報量に匹敵します。この30億というDNAの遺伝情報が、たった一つの卵細胞を分割させ、最終的には60兆の細胞から成る人間を作る仕組みや、老化、ガンなどのありとあらゆる生命現象を規定しているのです。
記憶に新しい事実として、母性遺伝されるミトコンドリアDNAが親子鑑定に用いられ、話題になりました。
「北朝鮮の少女キム・ヘギョンさん(15)と横田早紀江さん(66)のミトコンドリアがDNA鑑定で一致した。少女が北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの子供、早紀江さんの孫であることが確定したことになる」(2002年12月25日読売新聞・編集手帳)
細胞とは、そうしたDNAの働きによって作り出されたナノマシンの総合システムだと言えます。その一つひとつの細胞には、人間の身体のすべての能力が含まれているため、クローンとして複製しようと思えば、一つの細胞から人間の身体全体、つまり、小宇宙全体を作ることすら可能なのです。
私たちの脳もまた、そのナノマシンの細胞で作り出されています。すなわち、細胞の持つナノテクノロジーそのものが「人間の知」の源泉であると言えるのです。さらに言えば、人間の脳が作り出す文化や文明は、ナノマシンの細胞の中に用意されていたものであり、それを人間が再現しているということなのかもしれません。
40億年という悠久の時をかけ、進化の過程で生命が獲得したナノテクノロジーは、人間の創り出した現代のハイテクノロジーをしてもまだはるかに及ばないほど、高度なものなのです。

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