西野皓三│300年生きる①

人間は300年生きなければならない!?①
ホモサピエンスたる人間にとって、知識(情報)の質はとても大切です。脳にとって、その知識の“質”を高める方法は一つしかありません。知識の“質”を高めるためには、多くの人生経験を経て情報の“量”を増やすしかないのです。限られた領域の中では知識の量をどんどん増やしていくことで、知識が自然に醸成され、高い質の知識が得られるということはあります。しかし、学問の高度化・分化が進んだ現代においては、たとえば数学なり、化学なりの世界で一定の判断力が持てるほどの知識の質を獲得するには、少なくとも10年から20年の年月が必要になると言われています。
コンピュータ科学および人工知能の世界的権威であるマービン・ミンスキーは、「人間が一つの科学をマスターするのに2、30年はかかるから、人間が重要な知識を学び、本当に知恵を活かすには、300年から500年生きなければならない。そのためには将来、脳を他の身体へ移植することを考える必要があるだろう」と言っています。
ミンスキーは、人間にとって脳だけが特別なものであり、他の部分は交換可能な部品だと考えるラジカルな機械論者です。彼は「21世紀に入り、テクノロジーがさらに発達すれば、冷凍保存によって完全な状態に保たれた脳を、他人の身体、あるいは精巧につくられたロボットなどに移植することが試みられるだろう」と言います。人間が21世紀に必要な知識を蓄積し、その知を活かすためには、永久に生きる必要はないとしても、300年から500年は生きなければならないというわけです。
ミンスキーの考えはそれなりに説得力がありますが、その身体=機械論は、極論に属するといえます。人間は60兆個の細胞の絶妙な連動で生きています。身体の指令機関といえる脳といえども、けっして例外ではありません。人間の大脳は感覚器官や内臓など、身体の他の部分と相互に関係をとることで働いているのです。