動物にもある“エートス”としての知②
次に紹介されたのは、カナダ太平洋岸にあるジョンストン海峡でのシャチの狩りです。
ここでのシャチの獲物はサケですが、その狩りの方法は独特です。
サケは動きの速い魚で、それを捕らえるのは至難のわざです。そこでシャチは、仲間との通信に使う声を増幅し、超音波にしてサケに向けて発信するのです。すると、超音波を受けたサケは動けなくなり、いとも簡単に捕らえられてしまいます。
最後に紹介されたのは、南米アルゼンチンにあるバルデス半島のシャチの狩りです。
ここには毎年、三月から四月にかけてアシカの仲間であるオタリアの子育てをするために海岸に集まってくるのですが、シャチはそのオタリアの子どもを襲うのです。
シャチは、海岸でオタリアの子どもたちを見つけると、黒い三角の背びれだけを出して海岸に近づきます。すると、その三角の背ビレに誘われるようにしてオタリアの子どもは波打ち際から海の中に入って来ます。そこをすかさず、シャチはパクリとやるのです。
このシャチの狩りの方法は、バルデス半島だけでしか確認されていません。この方法は群れの中で代々受け継がれてきたものだと考えられています。
まったく同じシャチが、自己の生命を保持するために、棲む場所によってこれほど知的な方法で狩りを行っているのです。シャチはこうした巧みな狩りの仕方を、単なる本能や遺伝でもない、身体の知であるエートスとして獲得したのだと言えましょう。
西野皓三│動物のエートス②
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