西野皓三│感情を生み出す呼吸

豊かな感情も“呼吸”が生み出す
一般に感情と呼ばれている心の動きには、2種類あります。
一つは、情動が生み出す感情です。本能の働きと直結した感情です。「身体の中から沸き起こる感情」と言ってもいいでしょう。
たとえば、わが子が生まれた時に感じる喜び、あるいはおいしいものを食べた時に感じる幸福感などが、それです。これとは対照的ですが、他人から殴られたりした時に、反射的に感じる怒りなども、同じように情動が生み出す感情です。こうした怒りは情動が生み出すものなので健全なのです。
もう一つは、大脳(新皮質)が作り出す感情です。怨み、妬み、憎しみというのがその代表です。
この二種類の感情は、どこが違うかといえば、情動に基づく感情は、反射的に生まれるものであって、後には引きません。
ところが、大脳の作る感情は、いつでもなかなか消し去ることはできないし、後を引く。それどころか、時間が経てば経つほど増幅していきます。
これは大脳が「暴走」して生み出したものだからです。若杉さんが言う「怒り」は反射的な情動の怒りではなく、こうした大脳が作り出した怒りのことです。
大脳が暴走して作り出した怒りや恨みの感情は、後ろ向きで、何も産み出しません。それは自分を不幸にするばかりか、他人をも不幸にする。だから、「邪念」と言われるのです。
こうした邪念は、足芯呼吸を行い、腸管内臓系を刺激することによって消えていきます。
歴史の残るような大事を成し遂げた人たちは、生命力が高いため、無意識に深い呼吸を行い、細胞を活性化させていたに違いありません。足芯呼吸を体得すれば、おのずから精神状態は安定していき、少々のことでは動じなくなります。
呼吸は頭で理解すればいいというものではなく、自らの身体に覚えさせるものです。

2024年4月
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