西野皓三│嗅覚と身体知①

鼻が衰えれば、身体知も衰える①
動物にとって、嗅覚は生命維持に直結している重要な感覚です。
このことは、動物進化の延長に生まれた人間にとっても、嗅覚が重要不可欠なものであるということを予想させます。
実際、嗅覚は二つの意味で人間の生命を支えているのです。人間は、呼吸と食べ物によって外の世界(自然)からエネルギーを摂り入れて生きています。嗅覚は、この呼吸と食べるという、生命を支える二つの柱のいずれのも、密接に関わっているのです。
食べるという行為において嗅覚が重要なことは、あらためて説明するまでもありません。何でも食べ、食べることにこの上なく貪欲な人間にとって、嗅覚の鮮度や栄養素を含めて、身体によい食べ物の選択に大切な役割を果たしています。
味覚もまた、「食べる」ということにおいて重要な感覚ですが、この味覚は嗅覚から分かれた感覚なのです。水中生活する動物においては、味覚と嗅覚は区別が不可能なほど、密接な関係にあるのです。
食べるという行為ばかりでなく、嗅覚は、呼吸と深い関係にあります。
呼吸とは本来、「鼻から息を吸うこと」なのです。人類は、口でも呼吸できるような仕組みになっていますが、鼻呼吸こそが呼吸のメインであることは変わりありません。
人間は、きとんと鼻呼吸ができ、鼻および嗅覚細胞という器官がフルに活動していれば、生理学的には免疫は増すし、感覚的には外界との反応に敏感で、第六感が働く鋭敏さを発揮できるようになっているようです。

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