西野皓三│嗅覚と身体知②

鼻が衰えれば、身体知も衰える②
人間の場合、食道と気管が繋がっているという喉の構造的な問題、また、人間が言語を発するという特性などから、実際は口から息を吸う口呼吸になりがちになってしまっているのです。
「使わない器官は衰える」という生理学の原則を持ち出すまでもなく、口呼吸に頼る人間の感覚は、どんどん鈍くなっているのです。このことは人間の生命を大本で支えている身体感覚(身体知)を鈍化させることにも繋がっています。
現代社会に生きている私たちは、呼吸や食べ物という生命エネルギー以上に、脳の支配する情報を重視する傾向にあります。
生物が生命を維持する生の現実よりも、脳の中で概念やイメージという情報が作り出すバーチャル・リアリティーのほうが現実らしく見えてしまうのが、私たちの住む世界です。人間の嗅覚が失われつつあることも至極もっともなことでしょう。
ここにこそ、人類が立ち向かわなければならない最大の問題があるのです。人間は、脳の絶大な能力を駆使することによって歴史を推進させ、高度な文明社会を築いてきましたが、実は、同時に脳の働きが独り歩きすることで、「生命の危機」とも言える、さまざまな問題を生み出してしまっているのです。
この問題を解決するために西野流呼吸法の提示することは明快です。
足芯呼吸を実勢することによって、口呼吸を理想的な鼻呼吸に変え、嗅覚を甦らせ、腸管内臓系を活性化させることで情動感覚を豊かにする。足芯呼吸とは、頭脳をより働かせるためのベースでもある本格的な身体知を獲得するためのものなのです。

2024年4月
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