西野皓三│嗅覚の歴史②

“ニオイ”が歴史も変える②
また、洋の東西を問わず、古代より香水は珍重されてきました。よいニオイを嗅ぐということは人間の最も純粋な情動の一つだと言えましょう。日本人に比べて体臭の強い欧米人の間では、香水を身体に振り掛けることで、体臭をより魅力的なニオイに変えるという風習が広く行われていました。いい香水を作る一流の調香師は、立派な芸術家と見なされていたのです。
日本でも、平安時代から薫物を焚く風習があり、沈香を中心に、さまざまな香木を配合して複雑な香りを楽しんでいました。鎌倉・室町時代にはそれが香道として確立し、以後、現在に至るまでその伝統は続いています。
香道とは茶道に似た作法に則り、時間をおいて次々に回ってくる香炉のニオイを“聞く”(嗅ぐ)のですが、邪念を絶ち、気持ちを静める効果のある修養の道でもあります。

2024年4月
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