西野皓三│嗅覚細胞の驚異①

人智を超えた嗅覚細胞の驚異①
香りということで、もう一つ忘れてはならないのはお酒です。ブランデーも紹興酒(中国酒)も日本酒も、香りは大切ですが、ワインと香りは切っても切り離せません。ソムリエが言うにはワインと香りは切っても切り離せません。ソムリエが言うにはワインの味は、何よりも香りが一番大切だといいます。
ソムリエがワインを鑑定する時、まず、グラスを鼻に近づけ、その香りを嗅ぎます。その後でひと口含み、舌の上で転がし、舌触りの感触と口の中に広がる芳香や、ほのかな酸味を確認するのです。もちろん、視覚的に、色艶からブドウの醸成の具合を見ることもありますが、最終的な判断は嗅覚によるのです。
嗅覚は高貴なものというよりも、本能に根ざしたものであるがゆえに人間にとって欠くことのできないものなのです。
嗅覚の印象の強さを表した作家の文章を一つ引用してみましょう。
においの記憶というのは意外に強い。実態がないから思い出せない時はじつにもどかしいが、それだけに、ある匂いから過去の記憶をさぐり当てることができりすると、そのなまなましさは言いようもない。
その時の情景、色彩、肌に感ずる風、心理状態は言うまでもなく、一瞬にして、昔のその場に身を置いているような気にされるのはどういう心の不思議であろうか。嗅覚の記憶に比べれば、むしろ、視覚も触覚も聴覚もあやふやでにぶいものである。(小川香料ニュース『SUNDIA』No.16…田辺聖子)
田辺聖子氏に限らず、海外でも嗅覚に強い関心を示した作家はいます。『居酒屋』た『女優ナナ』の他、優れた短編小説を残したフランスの作家エミール・ゾラは、どんなニオイもすぐ感じ取ることができたということで有名です。

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