西野皓三│嗅覚の歴史①

“ニオイ”が歴史も変える①
嗅覚を最も刺激するものの一つにコショウがありますが、コショウが貨幣と同じくらいの力を持った時代がありました。
古代ヨーロッパ時代のローマでは、コショウはシナモンとともに最も珍重され、コショウの粒は同量の銀と等価だったと言われました。15世紀から始まる大航海時代には、コショウ貿易の利益を巡ってヨーロッパ列強の東方進出や植民地争奪戦が起こり、コショウが世界史を揺さぶる原動力にもなりました。
このことからも、嗅覚が人間の社会に非常に大きな影響力を持っていることがうかがえます。
6万年前に生存していた、現生人類に最も近いとされるネアンデルタール人は、歴史上初めて死者を埋葬したことで有名ですが、その墓跡と見られる洞窟から採取した土壌の中から、少なくとも八種類の花粉が見つかりました。ガスクロマトグラフ人たちは死者にたくさんの花を手向けたということでしょう。
花は美しさの象徴ではありますが、ネアンデルタールのような人類の先祖にとって、そのかぐわしい香りが、死んだ者への愛情を表したことは容易に想像できます。
メソポタミアでは、紀元前3000年頃の遺跡から、花やスパイスを原料に、香油を蒸留したと思われる土器が発掘されています。

2024年4月
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