西野皓三│エネルギーと天才①

生命エネルギーが天才を作る①
一般に人間の能力を決定する要因は、遺伝と環境だと言われます。確かにそのとおりでしょう。この二つのうち、いずれか一方が欠けても、その人の能力は充分に発揮されません。
しかし、遺伝と環境という言い方には誤解がつきまとっていたように思われます。
まず、遺伝について見てみましょう。一般的には人間の頭脳の能力、すなわち知力も遺伝の要素が関係していると思われます。しかし、実際、脳の遺伝について科学的にある程度確認されているのは、大脳辺縁系にある情動、感情の部分だけなのです。
喜怒哀楽の傾向や好み、関心は遺伝するとしても、その人の総合的な能力は、やはり努力次第ということになります。もちろん、学者や芸術家に向く好みや関心を持っていれば、その分楽しく努力ができるということはあるでしょう。しかし、脳の遺伝とはその程度のものなのだということです。
人間である以上、60兆個の細胞にインプットされているホモサピエンス(知の人)としての能力にはほとんど変わりない…遺伝というとき、まず忘れないのは、この事実です。
「天才とは人にできない努力が平気でできる人だ」とリルケは言いました。より正確に言えば、天才とは人のできない努力を楽々とできる、強力な生命エネルギーを持った人ということなのです。
たとえば、ピカソは絵を描き出すと寝食を忘れ、夜中だろうと何時間も描き続けたといいます。モーツァルトも同様でした。

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