西野皓三│西野流の対気①

西野流“対気”で、なぜ才能が引き出されるのか①
次に環境について見てみましょう。
本当に恵まれた環境とはどんな環境でしょうか。ただ楽をして、贅沢な生活ができるというのは、恵まれた環境とは言えません。自己の能力を最大限に発揮して生きるということが望ましい生き方だとすれば、望ましい環境とは、自然に努力ができる環境だということです。
ぬるま湯のように、気がついたらそれに甘んじてしまうような環境は、けっして恵まれた環境とは、自然に努力ができる環境だということです。
ぬるま湯のように、気がついたらそれに甘んじてしまうような環境は、けっして恵まれた環境とは言えません。自然に努力ができる環境とは、むしろ順境ではなく逆境なのです。
逆境が能力を生み出すというのは、一般に苦しい状況に追いつめられたり、社会から孤立させられると、猫に追いつめられた“窮鼠”(ネズミ)が全身のエネルギーを身体の内側に凝縮し、高いレベルのパワーとして放出するように、思わぬ能力を発揮するということです。
しかし、だからといって無理に逆境を作ろうと自分を追いつめるのは、ストイックな精神主義に陥ってしまう危険性があります。
そこで、西野流では、逆境に代わる最高の状況を産む稽古方向を作りました。それが“対気”というエネルギーを交流させる稽古です。
生命エネルギーを高めるために、これまで幾多の方法が模索されてきました。いわゆる荒行と言われる方法もその一つです。肉体を酷使し、極限状態に置くことによって生命エネルギーを内に凝縮して高めようという試みも行われてきました。
西野流の“対気”は、そうした伝統的な方法とは異なります。
対気とは、体から出るエネルギーのコミュニケーションです。コミュニケーションというのは、一般的には意思の伝達です。自分の思っていること、言いたいことを言葉によって伝えるのがコミュニケーションです。
人間は動作とか言葉で交流をはかり、意思を伝えます。それともう一つ、人間の持つエネルギーが自然に伝達を行っているということを忘れてはなりません。
意志とは人間が作り出した考えです。エネルギーのコミュニケーションとは、人間の考えとか作り上げる以前の、そういうものの根源の交流なのです。人間が作り上げる以前の根源のものとは、人間の持つ生命エネルギーだから、それを交流する。
これがまず、対気の意味です。人間は言葉のコミュニケーションによっていろいろなものを形成し、作り上げて、人間の豊かな生活、世界を作り上げている。それほど、コミュニケーションは大事なものなのです。
その大事なものであるがゆえに、生命力の根源である生命エネルギーをコミュニケーションするということは、さらに人間そのものを形成する上において、重要です。

2020年7月
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