西野皓三│原始感覚が理性を

原始感覚が“理性”を作る
情動とは、分かりやすく言えば喜怒哀楽のことですが、その源泉となるのが「快・不快」「好き・嫌い」という感覚です。
どんな動物においても、その最大にして唯一のテーマは「いかに生き延びるか」ということにあります。環境の変化に即応し、危険を避けて、自分の命を一分一秒でも延ばす…ヒトであれ、アメーバであれ、それは同じです。
自らの命を守るために生まれたのが、快・不快の原始感覚、つまり情動です。情動は、与えられた環境の中に最善に行動し、生命を保っていくという、遺伝的に定められた本能に支えられています。情動は、環境に適応しようという無意識の心の動きなのです。
今、自分がいる場所は安全か、心地よいか、それとも危険なのか、不安、不快か。口に入れた食べ物は安全か、うまいか、好きか、そうでないのか、まずいか、嫌いか…もともと、こうした情報から情動が作られたのです。自分に快適だと感じれば、その場にいるし、また不快だと感じれば、別の行動を取る。こうして、動物は生き延びてきました。
「快・不快」という感覚は漠然としたところがあるので、人間社会の中ではあまり重視されない傾向がありますが、この情動こそが人間の決断力の源泉だったということなのです。
その細かなメカニズムは、今後の研究課題でもありますが、大脳新皮質は「快・不快」という原始的なシグナルの助けを得て、多数の情報を色分け・選別し、決断を下しているのです。
近代以降、人間は、大脳新皮質だけが人間の知性の拠り所だと思っていましたが、そうではないのです。あらゆる動物が持っている“情動”の基盤があって、初めて人間の理性は生まれるのです。

2020年8月
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