西野皓三│脳と腸①

「脳」は「腸」から生まれた①
腸と脳の関係を知るうえで、最も重要な手掛かりとなるのが、ヒドラという原始的な動物です。
ヒドラは地球上のあらゆる動物の原点ともいうべきもので、今をサカノボル5億年前に誕生した腔腸動物です。ヒドラは体全体が消化器官になっていて、口から食べて口から排泄するという、きわめてシンプルな構造になっています。生きる手段として、必要な最小限の呼吸器官と消化器官しか持っていない生物だと言えます。
このようにヒドラは原始的な形態の動物ではありながら、進化の歴史において、最初に神経を持った動物なのです。
ヒドラの神経組織は、腸のまわりに散在しているだけのごく素朴なもので、食べ物が消化器官の中に入ってきたのを感知し、腸の働きをスタートさせるという働きだけしか持っていません。この単純な神経組織がヒトの脳へと進化する最初の一歩になったのです。
このヒドラが、ヒル、ミミズあるいは魚類へと進化していき、徐々に行動範囲が広くなっていくにつれ、腸のまわりに散在していた神経節も、単に食物を識別するだけでなく、外界のさまざまな情報を処理する必要がでてきました。
その結果、少しずつではあるけれども、神経系も複雑になっていき、腸の先端(食道)あたりに、神経が密集した神経節が作られるようになりました。この神経節が魚類、両生類、爬虫類、哺乳類と進化していくうちに、脳が出来上がりました。
私たちの大脳を構成している150億ものニューロン(神経細胞)は、腸壁の中にあった神経が脳のほうに移動して出来上がったものなのです。

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