アリストテレスの「頭脳第一主義」①
現代の脳第一主義を生み出した大きな要因の一つに、アリストテレスの影響があります。
アリストテレスは、ソクラテス、プラトンと続いてきた哲学を大成した大哲学者というだけに“知(sophia)”をこよいなく“愛する(philo)”人でした。この“知”を“愛する”という営為が、哲学(philosophy)という体系を創り上げました。
アリストテレスの「フィロソフィ」という知の体系は、「カテゴリー論」「命題学」「形而上学」に始まって、「天体論」「生成消滅論」「気象論」「宇宙論」「霊魂論」「動物誌」「倫理学」「政治学」「経済学」「詩学」に至るという壮大なものです。また、そこには生物学や心理学なども含まれています。
アリストテレスは、歴史上、類を見ない知の巨人だったと言えましょう。しかし、アリストテレスの「哲学」の中には現代の科学から見ると、明らかな誤謬が含まれています。その代表的なものは、錬金術を生み出すことになった「万物の根源は一つだ」とするアリストテレスのドグマ(独断)です(もっとも、錬金術は化学の発展に大きく貢献しました)。
天体の運行に関しても、アリストテレスはいくちかの間違いを犯しました。後にそうした天体に対する議論の対立は、科学者と神学者の間で白熱を究め、ガリレオ・ガリレイやジョルダーノ・ブルーノーをはじめとする、宗教裁判という歴史的な惨事を生みました。こうした不幸を生んだ背景には、神学の柱となったアリストテレスの「知の体系」があったのです。
もちろん、アリストテレスの知的業績はたいへん偉大ですが、アリストテレスの哲学が根本において「経験の知」というより「頭脳による推論」、つまり、形而上学に立脚していたということをしっかりと認識しておく必要があります。この形而上学の批判から、実証を尊ぶ科学が生まれたのです。
西野皓三│頭脳第一主義①
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