西野皓三│本能とは低次元か①

本能とは低次元のものなのか①
嗅覚のように根源的で重要な感覚を、人はよく原始的で低次元なものと誤解しがちになります。その典型が「本能」だと言えましょう。
本能の強いものが、生物の進化の歴史では逆境にも屈せず、逞しく生き延びてきたのであり、最大限に「知」を発揮してきたのです。本能の弱い動物は自然に淘汰されていきました。
一般に人間は動物の世界を「弱肉強食」と表現し、本能が強く生き延びていく強者を獰猛で野蛮な悪者と見なすところがあります。しかし、本能の強い動物が生き延びてこなければ、人間は存在しなかったのです。人間と人間の社会がここまで発展してきたのも、人間の本能が他の動物に比べて格段に強いからだと言えましょう。
そのいい例が、生命力の直接的な表れともいうべき「食」と「性」に関して、人間の本能が並外れているという事実です。
食について言えば、人間は雑食で、あらゆる種類の食べ物を食べます。
食べるということに関しても、いかに素材(その食材の持っている生命エネルギー)を活かして料理するかに知恵を注ぎ、どのように他の料理とのバランスを考慮して食べるかに、たいへんなエネルギーを注ぎます。古代より「食は文化なり」と言われてきた所以です。人間は「食べる」ということに対して、他のどんな動物より桁外れに貧欲なのです。
性についても同様のことが言えます。
人間以外の動物は一年のうち、定まった発情期にのみ異性を求めますが、人間は一年中いつも発情しているようなものです。これはネガティブに捉えると、「人間は動物の中で一番情欲に支配された、どうにようもなく下等な動物だ」ということになりかねませんが、そうではありません。ホモサピエンスと呼ばれる人間を下等な動物だと見なすことには、いかんせん無理があります。

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