西野皓三│すべて生命現象②

文化も文明も、すべて生命現象②
スペース・シャトルを打ち上げることも、生命現象です。
宇宙開発の動機はいくつかあります。地球の外から外敵が襲ってくることはないかを確かめること、地球に何らかの事情によって住めない状態になった時に備え、他に人間が住む場所を探すということ。これらはいずれも身を守るためということになります。衛星通信ネットワークを広げたい、地球上の軍事的なシステムの一環として使いたい、また国によっては、他の国の軍事基地を察知して、外交というコミュニケーションによって人類を無益な戦いから守りたいということもあります。これも「身を守るため」ということになりましょう。
電子顕微鏡を使って遺伝子治療を行うことも、もちろん生命現象です。医学は「生命を助ける」行為だからです。
現代人は見事に近代化されたハイレベルな社会で、文化的な生活を営んでいるように見えますが、実は、そうした豊かな生活の基には、つねに「身を守り、食を確保する」という、生命の維持に直結した原理が働いているのです。
芸術は生命現象として、さまざまな側面を持っています。たとえば、「100年に一人のプリマ・バレリーナ」と呼ばれるシルヴィア・ギエムの場合、彼女の踊りを観る人は、まず「一人間がこれほど透徹した美しさを表現できるのか」と、ただただ感動します。彼女の、次元を超えた存在感が、言い知れぬ共感を生み出しているのです。その共感とは「生命として見れば、バレリーナのギエムもまた同じ人間である」ということもあり、「生きている以上、人間には限りない可能性がある」という夢と希望を、観客に抱かせてくれるのです。
ピカソが絵を描くことや、パヴァロッティーが歌うことは、人間に感動と共感、そして、生きる希望を与えるという意味で、個人および人類全体の生命を守る壮大な生命現象なのです。

2020年8月
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