西野皓三│食欲は知力

食欲は知力なり
本能の王者・食欲に関する面白い話を雑誌で目にしました。
タイトルは「“知能は体力”を証明する一流将棋士の並外れた食欲」というものです。筆者の高橋敏孝氏は「将棋は頭脳ゲームだから、あまり体力は関係ないと思われる向きもあるらしいが、それが大きな間違いで、頭を存分に働かせ、自分の能力を盤上で見せ付けるためには、まずもって体力がなければ果たせない。“腹が減っては戦はできぬ”は腕力だけではなく知力も同じなのである」と述べています。
名人戦のような二日制のタイトル戦ともなると、お互いの体力の消耗は激しく、一日で、2、3キロは体重が減ってしまうと言いますが、この記事には、実際に名人、名棋士と言われる人たちが、タイトル戦でいかにその食欲を戦いの武器にしていたかが書かれています。
何よりも圧巻なのが、名人18期という偉業を達成した故・大山康晴15世名人の食欲です。
大山名人は、タイトル戦前日の会食会で関係者をはじめ、当の対局相手にその驚くべき食欲を見せつけ、相手に気後れを感じさせたといいます。
しかし、第31期王将戦の挑戦者・中原誠九段は、その大山名人に逆に食欲で注文をつけ、いつにない気迫を見せつけたのです。対局中に中原九段が突然、「チーズケーキをもらえませんか」と言ったのです。
加藤一二三九段はタイトル戦の対戦中に“うな重”を食べるので有名です。“うな重”で充分にスタミナをつけ、まずは体力を充実させることで、深夜にも及ぶ厳しい対局を乗り切ろうというわけです。
加藤九段は対局中にチョコレートを頬張ることでも知られています。地方でタイトル戦が行われた時、加藤九段から「〇〇製菓の板チョコが欲しい」と言われた関係者は大慌てで、結局隣町まで探しに行って、ようやく手に入れたというエピソードも紹介されています。
羽生義治氏は対局中にチャーシューメンが好きでよく食べると言います。羽生氏のひらめきの秘密もその食欲と関係あるのでしょう。
普通の人なら大舞台に立たされると、心理的に追い詰められ、食欲をなくしたりするものですが、そこが天才と言われる人たちの身体的(本能的)な能力の違いだと言えます。