「身体知」が楽しい人生を約束する①
脳(大脳新皮質)の機能は、そもそも外界からインプットした情報を基にして、言語やイメージを用いて幻想(バーチャル)の世界を作り出すことです。脳の知性だけに頼っていると、こうしたバーチャルな世界に巻き込まれ、振り回されかねません。
私はけっして、バーチャル・リアリティーそのものを否定しているのではありません。バーチャルという言葉には、もともと「事実の」「実質の」「実際の」という意味があるのです。
フランス気鋭の情報工学フィリップ・ケオは、こう語っています。
<バーチャル>の語源は、ラテン語の<virtus>で、これは力、エネルギー、最初の衝撃を意味する。近縁関係にある語として、力を表す<vis>、人間を表わす<vir>がある。このように<virtus>とは、幻想や幻影なのではなく、ましてや可能性の漠たる領域に投げ出された、起こりうる突発事にすぎないわけでもない。それは現実に、現実体として存在する。<virtus>は本質的に作用するものなのである。それは、それに<従って>結果が存在するための最初の原因であると同時に、結果の中の原因を<バーチャルに(実質的に)>とどめるものなのである。よってバーチャルは現実の次元に存在するのである。(『バーチャルという思想』)
バーチャルの世界を作り出すからこそ、人間は万物の霊長たるホモ・サピエンス(知の人)になり得たのです。
しかし、ホモサピエンスであると同時に生物である人間にとって何といっても最も大事なのは「今、生きている」ということです。このことをしっかりと自覚し、「今、生きている」自己の基盤の上に、バーチャルの世界を広げ、バーチャルの持ち味を十二分に活かせばいいのです。
パスカルは「生物として現実に生きている人間は、葦のように弱々しく見えるかもしれないが、その葦はただの葦ではない。考えることのできる葦だ」と言いました。
西野皓三│楽しい人生を約束①
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