西野皓三│逆境が人生を①

逆境こそが人生を拓く①
予想もつかない出来事の集大成が歴史でもあるように、人生というものは、本来、何の保障もない不安定ない不安定な基盤の上に形成されていくのです。
その不安定さの中で、人はそれぞれの人生を模索しているのですが、よりよい人生を築くのには、いったいどのような環境が望ましいのでしょうか。
逆説めきますが、恵まれた環境にいるよりも、逆境の中にいるほうが、人間は持てる能力を発揮し、自己をより進歩発展させて生きていくことができると言えましょう。
私の言う「逆境」とは、昔風の立志伝によくある「苦労は買ってでもしろ」というような、無理矢理に自分を追いつめた苦しい状況ということでも、精神主義的なストイックなものでもありません。疲弊や貧困が、人間を育てる望ましい環境だと言っているのでもありません。
生物としての人間にとって、真の「逆境」とは、未知の試練をはねのけて生きていくということなのです。
自然という環境の中で、生命はさまざまな試練に対処することによって、今日まで生き延びてきたのです。
たとえば、脊椎動物は水中から陸上に上がった時、1Gという重力を受けます。水中で受ける重力は6分の1Gですから、水中の6倍もの力を受けながら陸棲動物は生きていかなければならないのです。それで動物にとってたいへな逆境でした。彼らはその逆境をバネにして、重力に抗いながら実際に動くことによって、その身体を変え、知恵を伸ばし、さまざまに進化していったのです。
人間も生物である以上、それは同じです。あらゆる生物が自然という環境の中で生き、進化していったように、人間も逆境の中に身を置いたほうが、能力を育て、自己を高めていくことができるでしょう。
生きているということは、生物にとってあくまで心地よい快感なのです。
生物は、細胞レベルで生きる快感を感じているから、生きている…これは分子生物学の立証した最も重要な「生命の原理」です。彼らは苦しさに耐えて生きているのではないのです。生きているのが楽しいから、生きているのです。