古歩道│死の商人大手病院②

「死の商人」となった2つの大手病院チェーン②
HCAもテネットに負けてはいなかった。ピーク時の2005年には売上2兆2000億円と、テネットを凌ぐ巨大チェーンとなったHCAの問題は、設立した当初、評判も悪くなく、むしろ、良心的な病院チェーンだったことにある。良い評判で人気を集めれば、当然、テネットの目に留まり、買収の対象となる。先ほども説明したようにアメリカで良心的かつ健全に病院を経営すれば、すぐに利益率が下がって株価は低迷する。株が下がれば買収のリスクは高くなる。
HCAがテネットに買収されない唯一の手段は、たった一つしかなかった。敵以上に悪賢く稼ぎ、ライバルチェーンより不正請求や不正手術で売上を嵩上げし、テネットのビジネスモデルを導入することだ。
これが経済用語でいう「ヴァンパイア効果」である。吸血鬼に血を吸われたら吸われた人も吸血鬼になる。人の生き血を啜ってきたテネットとHCA,これほどヴァンパイア効果という用語がぴったりな事例は他にあるまい。
HCAは、テネットと激しく競合していた2000年と2002年、不正請求でアメリカ政府に970億円、1050億円という巨額示談金を支払っている。すべに1990年代には患者の生き血を吸う立派な「ヴァンパイア」になっていたのだろう。
2005年6月、HCA株が暴落する直前、HCAを創設したトマス・フリスト・ジュニアは、バーバコウ同様、株を売り抜けてインサイダー取引の疑いをもたれた。ちなみに株暴落を予見できたのは、彼の弟(ビル・フリスト)が共和党の幹部だからという。
アメリカでの調査で、非営利病院が株式会社病院に変わると、平均死亡率が0.266から0.387へと50%も増加、逆に株式会社から非営利に変わった病院は、死亡率が下がっているという結果が出ている。入院費用も同様に8379ドルが10807ドルへと2割近くも上昇しているという。つまり、現状でかく株式会社化をすれば医療の質が落ちて死亡率が上がり、治療費も高くなっている。
病院の株式会社化は、それ自体、悪ではない。むしろ医療の充実の「特効薬」として考えられたアイディアだった。その特効薬を医療システム崩壊の「毒薬」に変えてしまう、ここにアメリカの医療システムの深い闇がある。
いや、現代医療システムに欠陥があるのだ。

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