古歩道│死の商人大手病院①

「死の商人」となった2つの大手病院チェーン①
いい例がアメリカ最大の病院チェーンだった「テネット」と「HCA]である。
2002年、テネット社は売上額1兆7000億円、利益1200億円、全米屈指の病院チェーンとなった。この数字を見て「超のつく優良企業、日本が見習うべき」と絶賛していた経済評論家は、病気になったらテネットで治療を受けてみたらいい。無事、退院して、それでも絶賛するなら聞く耳をもつ。あのキラー・ドクターのいる病院から無事に退院することができたならば。
そのくらいテネットは、アメリカ医療の暗部を象徴している。
テネットが躍進した背景には、1980年代以降、患者をきちっと治療しようとすればするほど病院経営が逼迫、良心的ないい病院ほど株式会社化して、資金調達をする状況が生まれたことに起因する。そこに目をつけたテネットは、まず競争相手の地域の中核病院にM&Aを仕掛け、買収する。病院を乗っ取るためではない。その病院を閉鎖させるのが目的なのだ。そうして改めて、その場所にテネット経営の病院を建設する。テネット経営の病院では不採算部門を次々と閉鎖、人件費を極限まで下げる。たとえば看護師ではなく看護助手という無資格を雇ったりするわけだ。
医療の質を落としながら治療費は何倍にも値上げする。そのエリアに他の病院がない以上、地元の人に選択肢はなく、病院は満員御礼となる。これがテネットの高収益を支えた基本モデルなのである。
ここまでなら「悪徳病院」「ハゲタカ病院」で済ませられるレベル(それでもひどい話だ)だが、テネットは、そんな甘いレベルにはなかった。
なんと病院でありながら人の命を金に換金する「死の商人」となっていくのだ。
テネットの収益構造は、他の優良な病院を買収して潰し、新規に病院を建てる建設費が前提となっている。莫大な資金が必要となるのだ。そこでテネット創業者でCEOだったジェフリー・バーバコウは、病院ぐるみで不正請求を行ってきた。要するに偽計取引による「飛ばし」で架空の売上を計上、株を不正操作して調達資金にしてきたのだ。
それがバレそうになると、ついには、医者としての最低のモラルまで捨て去り、悪魔に魂まで売り渡す。儲けを出すためにテネットチェーン病院で、病気でもなんでもない人に、どうでもいい手術を繰り返すようになったのである。
かくて「悪魔の病院チェーン」は、手術の必要がない数百人に冠動脈のバイパス手術をしたとして、FBIの強制捜査を受けて破綻した。悪が滅んだわけではない。FBIの捜査直前、ジェフリー・バーバコウは、あろうことかストックオプションで自社株を売り抜け、まんまと1億2000万ドル(約100億円)の利益を得ている。株主代表訴訟で返還を求められても知らぬ存ぜぬ、その資金力を背景に医療系ロビイストとなって暗躍、TPPで日本にアメリカ型医療を押し付けようとしている勢力の黒幕と目されているぐらいなのだ。