古歩道│医療ギルド①

ギルドという国境なき職能騎士団①
西洋医学の世界は、「医療ギルド」によって成り立っている。その最たるものが「軍医」であろう。この章の最初に、西洋医学が「軍事技術」として発展した戦場医学だと述べた。そのシンボルが「軍医制度」なのだ。軍医は、軍隊の中でも非常に優遇されている。先にも書いたが、旧日本軍の場合、軍医は「中将」にまで出世する。ここで重要なのは、後方支援を担当する部署ではなく、軍医のまま「将軍」になれるのだ。つまり軍医は、軍隊の中で独自の組織と権限を持った、いうなれば「軍隊の中の、もう一つの軍隊」なのである。
軍隊という特性上、従軍医師が、組織に不可欠かつ重要な存在なのは間違いあるまい。しかし、それをいうなら前線で戦う一般兵を筆頭に、工兵、憲兵(MP)、情報通信兵、食料や弾薬を運ぶ補給部隊など、どんな役割だって重要であろう。声明を奪い、生命を守る組織ゆえに、非常にシビアな組織構造をしているのが軍隊であって、どれが大事で、どれがいらない、ということはない。それだけに命令系統は厳格で、組織を横断して一元管理している。
ところが、後方支援の一部門にすぎないはずの軍医は、この命令系統からはずれて、なぜか独自に運営されている。実際、日本の自衛隊でも陸海空の幹部候補生を防衛大学校で一元管理しながら、医官(軍医)だけ防衛医科大学校で独自運営している。学校施設や病院を別の場所に作っても「医学部」として防衛大学校に組み込んでもよかったはずだ。いかに「軍医」が軍隊内で独自性を持っているか、よく物語っていよう。
軍隊の中のもう一つの軍隊。ここに「医療ギルド」の体質がある。