古歩道│医療ギルド②

ギルドという国境なき職能騎士団②
ギルドは、日本語で「職能集団」と訳されることが多い。そのため日本で発達した同業組合である「座」や「株仲間」のようなイメージ、つまり、同じ商売をしている人間が集まり、組織力を使って「権限」を獲得する互助会と思いがちだ。
ギルドは、そんな生易しい「組織」ではない。
むしろ「職業騎士団」といったほうが実態に近いだろう。
騎士団とは、領主の命令で戦いに参加する武装集団のことだ。日本の武士団によく似ているが、その違いは領主との関係が「契約」であって、独自性が高いことだろう。たとえば敵対している領主に所属しながら敵方の騎士団と「不戦」契約を結ぶようなことも平然と行う。支配する土地で領主(国王)の定めた法律や税率を無視して、独自に法や税を決めることも珍しくなく、強力な騎士団になると公然と領主に敵対し、反旗を翻す。
まさに「国家の中の、もう一つの国家」となっていくのだ。
実際、中世のドイツ騎士団は独自の領土を獲得して独立していた。現存する騎士団の一つマルタ騎士団はヴァチカン、ローマ法王を守る治安組織ながらイタリア政府の管理下にはなく「国土をもたない国家」と呼ばれている。
お分かりだろう。ギルドは「土地」ではなく、領主から「職業」という領土を与えられた騎士団なのである。

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