古歩道│日本医師会による…②

日本医師会による日本医療占領②
それが1971年の医師会主導による全面ストライキなのだ。
武見の理論によれば、「薬価差益」とは、不当に低く抑えられている診療報酬を肩代わりしているものにすぎない。薬価差益を返上しろというならば、その分、診療報酬を上げろ、と要求してきたわけだ。医師会の主張をまとめれば、以下となる。
現在の医療は銀座の一等地の高級寿司屋と場末の回転寿司で値段が一緒になっているようなものなのだ。それどころか、値段は回転寿司に合わせている。
よく考えてみろ。我々、西洋医は、ずば抜けた頭脳の持ち主であり、超難関の医学部に入り、厳しい勉学と修行を経て医師となった。そんなスーパーエリートに診てほしいならば、本当は今の10倍、20倍の金を払うべきなのだ。事実、戦前までは、庶民が銀座の高級寿司を食べられなかったように病院にかかることさえできなかった。
それが今ではどうだ。誰でも蕎麦屋に行くように病院に来ている。それは我々が国民の健康を考えて「安値」で我慢してやっているからなのである。そんな我々に対して文句を言うなど言語道断。薬価差益ごときでガタガタ言うなら、医療をストップしてやる!
とまあ、これがストライキの理由である。この武見の理論に、大蔵官僚、というか、政府は撤退を余儀なくされ、薬価差益は見て見ぬふりで決着する。確かに医師会が主張するように日本の診療報酬は欧米より格段に安かったからだ。
だが、ここには巧妙なトリックが仕掛けられていた。
前章でも詳しく述べたように西洋医学は、もともと採算度外視の医療行為なので「高くて当たり前」なのだ。だから庶民は気軽に利用できる民間療法を利用してきた。武見の「寿司屋」理論で言うならば、高級な寿司屋でなくとも、懐が寂しいときは「うどん屋」や「牛丼屋」でも構わなかった。むしろ、状況に応じてすみ分けてくれたほうが選択肢も広がって、ありがたいぐらいだろう。