古歩道│医療被爆①

医療被爆による細胞のがん化を知っていた武見太郎①
iPS細胞=人工多能性幹細胞とは、ごく普通の成熟細胞に3つ(発見当初は4つ)の遺伝子を組み替えてやると細胞がリセット(初期化)されて幹細胞となる。周囲の細胞に合わせて増殖を始めるようになるのだ。たとえば損傷した角膜にiPS細胞をセットするだけで自然回復する。iPS細胞が再生医療の切り札といわれるゆえんだ。素晴らしい研究成果といっていいだろう。
しかし、このiPS細胞の発見が世界中の科学者を驚かせたのは、それで「がん化のメカニズム」がわかったからである。事実、山中教授も「実用化の最大の関門は、iPS細胞とがん細胞をがん化させないシステム」と語っているくらいで、IPS細胞とがん細胞の違いは、人間がコントロールしているかどうか、それだけの違いなのだ。
実際、がん研究において「何をすればがんになるか」は、十分、解明されているのに、「なぜがんになるのか」は、よくわかっていなかった。その回答としてiPS細胞のメカニズムが注目されている。IPS細胞は、通称「山中因子」と呼ばれる3箇所の遺伝子を組み替えてやる。それでiPS細胞となるならば、逆に、この山中因子を「破壊」してやれば細胞ががん化、つまり悪性新生物となる可能性がでてきたのだ。
そこで放射線である。レントゲンなどのエックス線(電磁波)が人体を透過する際、DNAにぶつかると、その塩基配列を破壊する。細胞が深刻なダメージを受けると正常な機能が失われ、通常はアポトーシス(自死)する。これが放射線治療や放射線殺菌の基本的なシステムとなる。
問題はここからだ。レントゲン撮影、とくに間接撮影タイプは、局部に強力なエックス線を照射する。確かに放射線総量はたいしたことはない。しかし、短期間で局地的に放射線が照射されれば、さっきの「山中因子」にぶつかる確率は加速度的に上昇する。

2020年12月
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