言霊百神|創造意志(子音)④

岐美二神は造物主であり、人間の先祖であると従来の一般神道家国学者は簡単に考えている。祝詞の中ではその名を皇御祖(すめみおや)と称えている。『ウエツフミ』などにも「タカマトヨチ、オホチ(大父)カムイザナギノミコト」と記されてある。然しここで改めてよく考えなければならぬ事はその人間の祖先と云うことの意味の取り方である。人間の先祖は既に人間であり、何処まで遡って行っても依然として人間であって、決して猿にもアメーバにも成らぬ。本来の神道で云う意味は、考古学や生物学的な観念から考えられた祖先と云う意味ではない。生物学が説く進化論は生物界に於ける空間的配列を試みに時間的配列に置き換えて見たところのダーウィンの仮設であることを知らなければならぬ。ヨーロッパ人が祖先と考えているキリスト教のアダム、イブの場合もまた神道の場合と同じであって、肉体の祖先のことを云っているのではない。
この神道的、キリスト教的人間の祖先は遠くに求める必要はない。実は今、此処に居る我々自体として存在している。此の人間である我々の中に存在する精神的実在としての始原の創造意欲である理体すなわち隠神を皇御祖伊邪那岐、美二神と云うのである。その意欲を実行する活動者として先天的性能と後天的可能性の全部を把持し、五体、八識、三十二相の揃った男女一対の現実の人間そのものを岐美二神と云う。

2024年4月
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