言霊百神│創造の序曲③

こ(是)の漂(ただよ)へる国をつく(修理)り固め成せ
漂える国とは混沌である。其処にはただ先天である父母十七音の天名が存するだけで、具象具体の実相現象としての何物もまだ生まれない境涯を云う。『日本書紀』はこれを「渾沌(まろか)」「滄溟(あをうなばら)」「滄海(あをうなはら)」「天霧(あまのきり)」と記して居り、或いは「我が生める国、ただ朝霧のみありて、薫り満てるかな」と述べている。現象以前の世界の有様をまことに美しく表現している。修理固成(つくりかためなせ)とは人間に与えられた先天である宇宙の森羅万象を創造し、次いでその森羅万象を整理し活用して人間の住むに応(ふさ)わしい文明世界を建設せよと云うことである。
但し、此の場合宇宙を創造すると云うことは太陽や星辰や、河海山野動植(かかいさんやどうしょく)
を作ると云うことではない。そうした物件自体を一体何者が作ったかと云うことは人間には不可知不可解に属することである。これを架空の観念の神なる者が作ったと仮定し、そう信じることは自由であるが、それはそれだけに止まることで真理にはならない。『古事記』は不可知不可解の内容を独断した観念の遊戯ではない。